本物のウイスキーを造りたいーー。1918年。大志を抱いた24歳の竹鶴政孝は、ウイスキーの本場、スコットランドに留学。そこで、ウイスキー造りを学んだのはもちろんのこと、生涯の愛を誓うリタとも出会った。帰国後に、政孝が独立の際に選んだ夢のスタート地点、それが北海道余市町だった。

 

澄んだ水と空気、それに本格ウイスキー造りには欠かせないピート(草炭)が余市には豊富にあった。そして、なにより、冷涼で湿潤な気候。余市の年間平均気温は8度。これはスコットランドとほぼ同じ。1935年、蒸溜所完成の翌年、初めてこの地に降り立ったリタは「故郷にそっくり」と喜んだ。

 

JR余市駅からほど近い町の真ん中に『ニッカウヰスキー余市蒸溜所』はある。ヨーロッパの城塞を思わせる堂々たるたたずまい。2人の孫・竹鶴孝太郎さんは「本物に、とことんこだわるお祖父さんらしい工場です」とほほ笑む。

 

ここは細部に至るまで、政孝の本物志向が貫かれている。その最たるものが、巨大なポットスチルが立ち並ぶ蒸溜棟。伝統的な石炭直火蒸留法が、いまも採用されているのだ。

 

「火力調節が難しくコストも人手もかかるため、いまではスコットランドでも敬遠され、この方法を採用しているのは、世界でもおそらくここだけ。でも、石炭の強い火力でもろみを焚くことで、香ばしく力強い原酒ができるのです」(ニッカウヰスキー北海道工場総務部長・古屋野義一さん)

 

余市を訪れたなら、まずここで、リタの支えのもとマッサンが目指した“本物”に触れてみたい。

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