《中山秀征の語り合いたい人》、今回のお相手は、経験に裏打ちされた歯に衣着せぬ力強い言葉で、メディアから注目を集める“女装の教授”安冨歩先生(51)。東京大学東洋文化研究所の教授が、“いい子”の作り方、を語る。

 

中山「先生は、京都大学を出て東大の教授をされていますよね。先生のように子供を育てたいお母さんってたくさんいると思うのですが、どんな教育法だったんですか?」

 

安富「うちは、両親が戦前生まれの世代なんですが、彼らは小さいころに学校で男の子は『早く大きくなって戦争へ行ってお国のために死ね』、女の子は『夫も息子も戦場へ送り出し、立派に戦死したら喜びなさい』という教育を受けています。洗脳ですね。その思い込みというのは戦争が終わってもとれない。私も当たり前のように『そんな弱虫じゃ兵隊になれないぞ!』なんて言われながら育ちました」

 

中山「そうなると、先生も、子供心に戦争を意識しますよね」

 

安富「私は痛いことやつらいことに弱いので、兵隊に行くのがとても嫌でした。いま考えると、女の子になれば戦争に行って死なずにすむと思ったことが、このスタイルをつくったのかもしれないですね」

 

中山「なるほど。死への恐れがどこかにずっとあったんですね」

 

安富「私に限らず、エリートと呼ばれる人や成功する人は、子供時代に“いい子にしていたら今日1日生きていていいですよ”という『生存切符』を親から発行され、死を意識しながら育つ人が多いと思います」

 

中山「それはどういう育て方なんですか?」

 

安富「“ワガママを言ったり、親の言うことに従わなかったりするなら、生きてはいけない”というようなことを感じさせながら育てるのですが、それをすれば言うことを聞くよい子になります。そして親に言われるまま死ぬ気で勉強し、東大に入ったりする。私もそうやって『生存切符』を発行され、大学入試に合格し、博士号を取り、挙句の果てに東大教授になりました。ただ、どの試験にパスしても『ああ、やれやれ』と思うだけで、うれしくもなんともなかったんです。失敗したら、一体自分がどうなってしまうのかわからないような恐怖を感じるのです。そうやって、毎回、目の前の深い谷を死ぬ気で飛び越えて『ああ、よかった』ってホッとしている人生でした。

 

中山「もし先生のようにさせたかったら、深い谷を見せ必死にさせろってことですね」

 

安富「はい。ただし、1度でも何かに失敗したらかなりの確率でその子は廃人になります」