《中山秀征の語り合いたい人》、今回のお相手は、経験に裏打ちされた歯に衣着せぬ力強い言葉で、メディアから注目を集める“女装の教授”安冨歩先生(51)。東京大学東洋文化研究所の教授が、日本をゆがめる“立場主義”というシステムについて語った。

 

安富「日本人は立場というものをとにかく大事にしますが、『立場』という概念は世界中どこを探してもほかの国にはないんですよ。高度成長期にはその“立場主義”もうまく機能したのですが、今は機能していないにもかかわらずシステムだけが維持されています。言うことを聞くよい子だったような連中はそうした立場にしがみつき、何もせずとも自分たちにお金が入る仕組みを作っている。政策というのはそういう人間の都合がよいように作られています」

 

中山「上の人間だけが私腹を肥やして、現場の人間は自腹を切っていたりしますもんね」

 

安富「でも、立場にしがみついている人間も不幸なんですよ。その立場を守るためには自分を捨てて“役”に徹しないといけない。当然ストレスがたまります。さらに家にはその人自身とではなく、その人の“立場”と結婚し、夫を搾取する役割の妻がいる。好きで結婚したわけじゃないのでセックスレスだし、働いたお金は妻に牛耳られ、わずかなおこづかいで生活しなくちゃいけない。会社でも家庭でも追いつめられ『戦争でも起きたらすべてがチャラになるのに』と毎日思っているようなひどい精神状態になってしまうんです」

 

中山「何もかもが嫌になってしまうのか」

 

安富「私も元の配偶者からモラル・ハラスメントを受けていた時代はまさにそういう気持ちでした。一緒にいるのが本当に嫌なのに、責任感や罪悪感から『離れたらいけない』と思い込んで苦しくなって。いっそ戦争でも起きたら楽になれる、などと考えてしまったりして……。政治でも企業でも、中軸にいる人は、そのような立場に縛られ、身動きが取れずに追いつめられているんです」

 

中山「幸せに楽しくやっているトップなんてほとんでいないってことですね」

 

安富「まずいませんよね。そして、彼らのたまったストレスや内側に渦巻く暴力は、必ずどこかで噴き出します」

 

中山「心の奥底で、すべてがなくなればいいのにと願いながら立場のために働いて、別のところで発散しているんですね」

 

安富「本当は単純に離婚したいとか、会社を辞めたいとか、好きなゲームを1日中やりたいとかそれだけのことなのに、それをやらずに別のことで紛らわせて。実際、人間がやりたいことって限られているんですよ。おいしい物を食べたいとか、ステキな人と仲 よくなりたいとか、幸せに子供を育てたいとか……。そうしたもの以外の欲望というのは何かの噴出なんです」