3月8日に逝去された塩月弥栄子さん(享年96)。その著書『冠婚葬祭入門』シリーズは、’70年に初版が刊行され、合計で700万部を超える大ベストセラーに。昭和の時代の「しきたりやお作法のバイブル」は、平成のいまもなお、確実に私たちの「?」に答えてくれる。そのエッセンスを抽出して、お届けしたい。

 

《贈答》とは?

冠婚葬祭という人生の4大儀礼の中で、私たちのふるまいを代表するものが、贈答、つまり物を贈ること、お返しをすることだと思います。

 

【1】贈り物の品数は、祝い事のときには奇数、不幸のときは偶数にする

数に関する縁起としては、吉の数は3、5、7のほかに、8が末広がりとして喜ばれ、4と9は「死苦」に通ずる凶数として嫌われます。また、海外では13が凶数です。

 

【2】魚介類には、のしをつけない

「のし」はのし鮑(あわび)の略です。現在では折りのしといって、紅白の紙を雛人形のきもののように折り、その中にたんざく型に切った黄色い紙片のようなものを包み込んでいますが、本来はその黄色いものがのし鮑です。

 

【3】目上に「寸志」と書いてはいけない

表書きの言葉で、謝礼には「御礼」「薄謝」のほか「寸志」がよく使われますが、これは目下への言葉で、先生や上役などへは使えません。

 

【4】内祝いはお返しではない

出産、七五三、結婚、受賞、賀寿、新築などの場合に、内祝いの品を配ります。内祝いはいただいたお祝いのお返しとは違います。内々の祝いということのほかに、自分で自分を祝う「自祝い」の意味が含まれています」

 

【5】お返しはいただいた日から1カ月以内にする

 

【6】親しい人へ財布を贈る場合は、5円玉を入れておく

 

【7】手土産は、贈り先の近くの店で買わない

贈り先の近くの店で買った菓子折りやくだものかごでは、いかにも間に合わせのようで、感心しません。

 

【8】被災地への救援物資は、送料自己負担で送る

 

【9】災害見舞いにお返しはいらない

お見舞いは、口頭や手紙だけのもの、労力提供、見舞いの金品をいただいた場合などいろいろありますが、いずれの場合もお返しの品はいりません。

 

【10】病気見舞いに食べ物を贈るときは、看護人に確かめる

 

【11】快気祝いは礼状だけでよい

病気は災害のようなものだからお返しはいらない、という考え方で、丁重な礼状だけを出します。

 

【12】餞別にはお返しをしなくてよい

地方転任で家族ぐるみで転居するときに、お祝いをかねた餞別のお金や品物をいただくことも多いようですが、いただいた側では別に改まってお返しの必要はありません。落ち着きしだい、無事着任の挨拶をかねて礼状を出す程度でよいでしょう。

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