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取材に訪れた日は、ちょうど市議会の定例会。傍聴席から議場を眺めると、居並ぶのはオトコ、オトコ、オトコ……平均年齢66.1歳の男性市議たち。相対する市の執行部席もオトコだらけ。議場は男性で埋め尽くされていた!

 

「女性読者の方から『なんて旧態依然とした市だ』と叱られそうで。本当にもう、外も歩けない気がしますね」

 

鹿児島県垂水市議会の池山節夫議長(67)は、本誌記者の直撃にこう言って苦笑い。今年4月、石川県かほく市に同市初の女性市議が誕生したことで、日本全国に791ある市のなかで、過去から現在に至るまで女性市議がいないのは垂水市だけになった。

 

女性の政治参加が認められて70年余。国を挙げて女性の活躍を推進してきた日本で、なぜ垂水市には女性市議が生まれてこなかったのか。オトコ臭〜い議会終了後、尾脇雅弥市長(50)に話を聞いた。

 

「なぜ女性市議がいないのか、と聞かれても正直、明確な答えは持ち合わせてません。最終的には市民の皆さんの判断だったとしか言いようがない。ですが、子育て支援や健康長寿という、市が取り組んでいるテーマを考えれば、女性市議にいていただくことが望ましいと私自身は考えています」

 

いっぽう、池山議長は女性市議が生まれてこなかった背景をこう分析する。

 

「私が初当選した’99年当時の議員定数は22。ところが人口減少や財政難を受け、市民から定数削減の声が上がり、選挙のたびに市議会は議員定数を減らし続けた。前回選挙では14にまで減った。現職が強いとされる地方議会選挙がより狭き門になって、男性でも新人が挑戦するには難しい環境に。これが女性市議誕生を遅らせた理由ではないか」

 

当の女性たちはどう考えているのか。議会以外のさまざまな場所で活躍する垂水の女性たちに聞いてみた。

 

ますは、夫が経営する建設会社の社内に、特産の農産物を使った加工食品を扱う部門「たるみず畑」を立ち上げた竹之内敬子さん(47)。「いんげんのポタージュスープ」などの商品が全国的に人気だ。北九州市出身の竹之内さんは20年前に垂水市に嫁いできた。

 

「同じ九州ですが、北九州と比較しても、垂水はとにかく女性が男性を立てているな、というのが最初の印象」(竹之内さん)

 

結婚当初、買い物に行ったスーパーで男性客を見かけることはほとんどなかったとか。

 

「都会なら普通に男性が買い物しますけど、当時、ここでそれやった人がいて、すっごい噂になってた。『夫婦で一緒に買い物して、ご主人が買い物かご持ってたよ』って(笑)。うちの主人?そもそもここでは買い物に行かない(笑)」(竹之内さん)

 

次に話を聞いたのは、絵付師の室田志保さん(42)。江戸時代末期にヨーロッパへ輸出し大ヒットした薩摩焼のボタン、その名も「薩摩ボタン」。その後、粗製乱造などで人気は下火となり、戦後には作り手もいなくなっていたのを、10年ほど前に復活させたのが室田さんだ。海外で高い評価を得ている。

 

「ごめんなさい、女性市議がいないってことを意識したことがないから、いない理由もよくわからないんです」(室田さん)

 

開口一番、記者に謝罪。だが、彼女はニヤリと笑って、こう続けた。

 

「でも、垂水の女性は決して弱くなんかないです。むしろすごく強いと思う。男性たちを手のひらで転がしてるのが、ここの女性なんだと思いますよ。だからね、けっこうタチが悪いかもしれませんよ(笑)」(室田さん)

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