17年7月、110年ぶりに性犯罪に関する刑法が厳罰化された。しかし、課題はまだまだ山積みだ。
「親などの“監護者”が18歳未満の子供に性的な行為を行うと暴行や脅迫がなくても処罰されることとなりました。ですが、親族や父母の交際相手、さらに教師やコーチなどは含まれません。そのため『範囲が狭すぎる』との指摘があります。
また日本の性交同意年齢は13歳です。13歳に強制わいせつを行った加害者の罪を問うためには、暴行もしくは脅迫があったと証明しなくてはなりません」(前出・全国紙記者)
さらに「抵抗できない性交」の証明が日本では難しいという。
「Aさんの一審では、抵抗できないような心理状態に置かれていたかどうかが、裁判で争点となりました。ですが、裁判所は『Aさんが親の反対を押し切って専門学校に通った』などの理由で『抵抗できないほどの精神状態には陥っていなかった』としました。
意に反する性行為が行われただけでは処罰の対象になりません。物理的に抵抗できない状態であったか、そして加害者がそれを認識していたかが重視されます」(法曹関係者)
Aさんは今年3月、手記を発表している。性虐待を受けた当時を回想し「次第に私の感情もなくなって、まるで人形のようでした」とつづったAさんだが、こうつづっている。
「昨年、性犯罪についての無罪判決が全国で相次ぎ、#MeToo(ミートゥー)運動やフラワー・デモが広がりました。それらの活動を見聞きすると、今回の私の訴えは、意味があったと思えています」
「なかなか性被害は言い出しにくいけど、言葉にできた人、それに続けて『私も』『私も』と言いだせる人が出てきました。私の訴えでた苦しみも意味のある行動となったと思えています」
親が有罪となっても、性虐待を受けた子供の時間は戻らない。また、心の傷が癒えるにも時間が必要となる。その苦しみを和らげるために、そしてその声を広く届けるために、当事者でなくても“できること”はあるのかもしれない。