フリップを掲げ、感染防止を呼び掛ける小池百合子都知事(写真:時事通信) 画像を見る

「うちの病院のICUはいま、20床中のうち17床がコロナ患者で埋まっています。前回の第1波や第2波と比較しても『これほど一気に増えるのか……』と愕然としています」

 

こう医療現場のひっ迫ぶりを明かすのは、関西のある大学病院で働く看護師だ。

 

“第3波”ともいわれる新型コロナウイルスの感染拡大が、深刻化している。11月18日には1日あたりの新規感染者が初めて2千人を突破。また25日には重症者数が全国で376人となり、過去最多を更新した。

 

その影響は早くも出ているという。冒頭の看護師が悲鳴を上げる。

 

「一般病棟のベッドもコロナ患者用に50床ほど増やしましたが、もう空きがありません。現場はもう限界です。休みは全然ないですし、来月はすでに“夜勤明けに日勤”なんてシフトが連発しています……」

 

今回の“第3波”で特徴的だと言われているのが、高齢者の感染が激増している点だ。

 

これまでは、若者を中心に夜の街などでクラスターが発生しているといわれてきた。

 

しかし11月24日の大阪府新型コロナ対策本部会議で提出された資料によると、真逆の傾向が明らかに。第2波のときは40歳以上の陽性者が全体の34%だったが、今回は57%にまで急増しているという。

 

コロナ第3波で際立つ高齢者の感染 60代の重症化率は25倍超
画像を見る おびただしい数の微細な新型コロナウイルス(ピンク色)がついた患者の細胞(写真:時事通信)

 

さらに感染者数だけでなく、重症化率も問題となっている。

 

厚生労働省が11月28日に公表した資料によると、40代の重症化率は30代の4倍とのこと。さらに50代では10倍、60代だと25倍になるというのだ。

 

感染制御学を専門とする愛知県立大学の清水宣明教授は、寒くなってきた気候の影響を指摘する。

 

「高齢者の感染が多いのは、冬になったことによる気象要因が影響していると考えられます。まず気温が下がると、空気中に含まれる水分量が夏場より少なくなります。その空気を取り入れて暖房で暖めると室内の湿度が下がるので、水分が蒸発しやすくなります。

 

感染者の口からはウイルスを含んだ微細な粒子(エアロゾル)がたくさん出ますが、乾燥した室内ではすぐ水分が蒸発して小さくなっていく。そして空気中に長い時間漂い、その量も増えます。

 

粒子が大きければ口から入っても喉で止まります。しかし小さくなると、より奥までダイレクトに入ってしまいます。そして肺に達して感染して肺炎を起こし、重症化する可能性も出てくるのです」

 

また60代の重症化率が30代の25倍というデータは、実は8月末までの統計が元になっている。清水教授はこう警鐘を鳴らす。

 

「ここでいう重症化とは、主に人工呼吸器を使う必要がある肺炎を意味します。だから25倍というのが8月までのデータを元にしているのであれば、乾燥しやすいこれからの時期はさらに重症化率が高まる可能性があります。

 

特に高齢者は若者に比べて肺の機能が低く、からだの免疫力も弱い人が多いです。喉の粘液によるバリアも弱くなっています。寒くなると水分を取らなくなるので、ますます乾燥しやすくなりますしね。すべてが連鎖的に悪い方向に向かうのです」

 

2020年も、あとひと月。無事に年を越せるよう、気を引き締めて日々を過ごしたい。

 

「女性自身」2020年12月15日号 掲載

【関連画像】

関連カテゴリー: