■アンケートで明らかになった驚きの実態
入浴や排せつの介助時には、体が密着せざるをえない。耳が聞こえにくい入所者との会話は、どうしても近寄ってしまう。いくら細心の注意を払っていたとしても、完全な感染予防対策を取るのは難しいだろう。
しかし、いくら要望書を出しても府は沈黙するばかり。
そこで木場氏は介護老人保健施設(老健)の実態を広く知ってもらうため、アンケートを実施したという。
「加盟する188施設に呼びかけたところ、わずか5日で131施設から回答が返ってきました。それだけ、どの施設も危機感を抱いているということでしょう。アンケートの結果、『感染者が出た』と回答したのは44施設。3割以上にのぼりました。
さらに5人以上の感染者が出た場合をクラスターとしているのですが、これには10施設が該当。このなかで、8つの施設に陽性者の待機指示が出されていました。つまりクラスターが発生している施設の8割で、感染者がそのまま放置されていたのです。
逆にクラスターにはならなかった残りの34施設のうち、待機指示が出されていたのはわずか3施設だけ。明らかに陽性者を施設内で預かったままにしていることが、感染拡大の引き金になっているといえるでしょう」
驚くべきは、待機を指示された期間だという。木場氏が語気を強めてこう続ける。
「感染者を2~3日で入院させてもらえたのは、たったの3施設だけでした。あとは、ほとんどが1週間以上。なかには、2週間以上放置されたままだった施設もありました。
病床数がひっ迫しているのは理解しているので、『入院調整のため、少しの間だけ待機していてください』というのならわかるんです。でも重症化リスクの高い高齢者たちがいる施設で、感染者を2週間もほったらかしというのはどうなのでしょうか。
本当に新型コロナウイルスを収束させる気があるのか、疑問に思いますね」