ファスト動画で初逮捕者 著作権侵害後押しした“視聴者”の存在
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6月23日「ファスト映画」を公開した3人が逮捕された。ファスト映画とは、本物の映画のシーンをつなぎ“ネタばれ”ありで10分程度に短く編集したもの。巣ごもりが始まった’20年春から増え問題視されていたが、初めて逮捕者が出た。そんなファスト映画について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■見る人が多いほど映画産業に打撃が

 

ファスト映画は、もとの映画の映像などを無断で使い、あらすじのほとんどを紹介している点が「著作権の侵害」に当たります。これは著作権法の違反で、10年以下の懲役か、1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられる罪です。映画やアニメなどの会社でつくるコンテンツ海外流通促進機構によるとこの1年で2,000本を超えるファスト映画が作られ、被害は956億円にのぼるといいます。

 

とはいえ、ユーチューブなどには匿名で投稿することが多く「何をしてもバレない」と考える人もいるかもしれません。ですが、今回のように犯罪性が認められれば、投稿者はすぐに特定されます。ツイッターなどへの書き込みも同じですが、発信には責任が伴うことを自覚してほしいと思います。

 

そもそもなぜ著作権を侵してまでファスト動画を公開するのかというと、ユーチューブの広告収入を得るためでしょう。ユーチューブの投稿者は、自分のチャンネルを開設し、自作動画を投稿します。そのチャンネルを“お気に入り”に登録してくれるチャンネル登録者を1,000人以上集め、自作動画の総再生時間が、直近1年間で4,000時間を超えると、晴れてユーチューバーの仲間入り。18歳以上なら広告が付くようになります。

 

ただ再生1回で0.1円程度が一般的な収入。広告が10万回再生されても広告収入は1万円ほどですから、ユーチューバーはなかなか厳しい世界といえるでしょう。

 

そんななかで、ファスト映画は再生回数が伸び、今回逮捕された3人は少なくとも450万円の広告収入があったといわれます。

 

つまり「見る人が多い」ことが、ファスト映画という著作権侵害を後押ししたといえるでしょう。視聴者からは「10分で映画のおもしろさがわかる」などの肯定的な意見もあったといいますが、映画業界の損害は甚大です。映画業界が疲弊すると、映画製作自体が減ってしまうことにもなりかねません。著作権を守ることは、映画の楽しみを失わないためにも大切なことなのです。

 

著作権侵害では’17年に『ワンピース』や『キングダム』といった人気漫画を無断で公開した「漫画村」の事件が記憶に新しいでしょう。判決が6月17日に確定しましたが、漫画村の運営責任者には懲役3年、罰金1,000万円の実刑判決が下されました。著作権侵害の罪の大きさを物語っています。

 

こうした事件を繰り返さないために、視聴者である私たちの意識改革とともに、政府には現在のネット社会に見合った著作権法の整備を求めていきたいと思います。

出典元:

「女性自身」2021年7月20日号

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