昨年9月、自民党総裁選・新総裁に菅氏を選出(写真:アフロ) 画像を見る

この1年国民の思いとすれ違い続けた菅政権が、驚くべき早さで終幕を迎える。世間は「次の自民党総裁は誰なのか?」という議論で持ち切りだが、菅政権が残す数々の課題はなかったことにはできないーー。

 

9月3日に、自民党総裁選に立候補しないと表明した菅義偉首相(72)。昨年9月の就任からわずか1年あまりで首相の座を下りることになった。

 

短い期間だったが、菅政権がこしらえた負の遺産は多岐にわたる。これらを整理することで、次の政権の課題を可視化していこう。

 

■沈んだ日本経済と進んだ格差

 

4−6月期の実質GDPの成長率が、前期のマイナス成長からプラスに転じた日本経済。しかし、同じようにコロナ禍に苦しんだ諸外国のGDP成長率と比べると、回復傾向とはいい難い。

 

第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんは次のように語る。

 

「今年に入って東京都では緊急事態宣言が出されていない期間は約2カ月。そんな状況では、GDPも減って当然です。緊急事態宣言が出されれば、行動制限によって消費は押し下げられてしまう。菅首相になってから3回の緊急事態宣言が発出されていますが、その経済的損失はあわせて6.8兆円になると見込まれています」(永濱さん)

 

解除しては、すぐに感染者が増えて再発令。緊急事態宣言の乱発については、場当たり的な対応を繰り返すことで、人々の警戒感を弱めてしまったという指摘も多い。

 

さらに、経済損失の裏で、格差も広がっていると永濱さん。

 

「コロナショックの影響で、サラリーマンの給与は低迷していますが、その一方で株高などにより富裕層の財産所得は堅調です。日本経済は菅政権前から、中産階級の貧困化とインフレが重なり、富裕層との格差が広がっていました。生活必需品の価格が上昇基調にあるなか、よりいっそう格差が広がることが懸念されます」

 

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