■フリーパスだった米軍関係者
「(米軍基地が)その一つである可能性があると考えています」
1月11日の記者会見で、“国内の感染拡大の原因は米軍基地にあるのではないか?”と問われ、松野博一官房長官はこう答えた。
政府は昨年末から、“水際対策”を強化し、日本国民であっても、海外からの入国者には72時間以内の陰性証明に加え、空港での検査や2週間の自主隔離を課してきたのだが……。
「米軍関係者は、そうした日本の検疫ルールを守る必要はなく、フリーパスだったんです」
そう明かすのは、『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)の共著書などがある、沖縄国際大学教授の前泊博盛さん。
その原因は、在日米軍の基地使用や行動などについて規定した“日米地位協定”にあるという。
「この協定は、アメリカの占領時代が終わっても、在日米軍が日本で自由に行動するために作られたものです。たとえば、在日米軍関係者は、基本的に日本の法律ではなく、アメリカの法律が適用されることになっている。コロナ禍においても、在日米軍関係者は、日本の検疫を免除され、自由に出入国していたのはそのためです」
そればかりか、在日米軍は昨年9月以降、日本への入国前後に行っていた検査を、日本に連絡することなく取りやめていた。
その結果、全国の米軍基地で大規模なクラスターが頻発。マスクなしに基地外に繰り出す米兵や、基地で働く日本人職員などを通じて、感染が周辺に広がっていったとみられている。
日本が行ってきた感染対策を完全に無視した米軍の態度。しかし、同じく米軍が駐留している韓国では対応が大きく異なっている。
琉球新報の報道によると、韓国に入る米軍関係者には、出国前の検査に加え、入国後2回の検査が継続的に行われている。うち1回は韓国側が行っているという。
この対応の差はなんなのか。
「韓国は、平時と有事に分けて駐留米軍に対処しています。今回のような国民の命にかかわる場合は〈検査を受けなければ入国を認めない〉と、主権国家として強く求めることができるのです」
米軍が駐留している国はほかにも多数あるが、受入れ国の法律が米軍に適用されない、という屈辱的な対応を受け入れているのは、日本ぐらいなのだ。