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10月から医療費が2割負担に。年金支給年齢引き上げ、暦年贈与の廃止も検討……。7月に予定されている参議院選挙後は、高齢者のお財布に響く制度改正が予定されている。そこで、高齢者が注目すべき制度改正を経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説。老後資金を守るためにも、一つ一つ確認しよう――。

 

■年金支給年齢の引き上げも本格検討?

 

【75歳以上の医療費10月から2割負担の導入】

75歳以上の医療費は現在、現役並みの所得(単身世帯で年収383万円以上、2人以上の世帯で年収520万円以上)の方は3割負担、それ以外の方は1割負担です。

 

’22年10月以降、新たに2割負担の枠組みが加わります。2割負担になるのは単身世帯で年収200万円以上、2人以上の世帯で年収320万円以上の方。対象者は75歳以上の約2割、約370万人です。

 

施行後3年間は毎月の負担増が3,000円以内に収まるような措置がとられ、また、自己負担の上限を超えた医療費は申請すれば返金される「高額療養費制度」もあります。自己負担が1割から2割に上がっても医療費が2倍にはなりませんが、病院通いの多い高齢者には手痛い施策でしょう。

 

【暦年贈与の廃止を検討】

暦年贈与とは「年間110万円以下の贈与には贈与税がかからない」仕組みを利用して行う贈与のこと。110万円以下なら贈与税の申告も不要なので、よく利用されます。

 

また相続税が必要な方は、暦年贈与で少しずつ財産を減らし、税負担を抑える手がよく使われます。

 

ここ数年、相続税と贈与税の一体化が議論され、’21年末の税制改正大綱に「暦年課税制度を見直す」と記載されました。早ければ’24年から暦年贈与が廃止になるかもしれません。

 

【年金の支給年齢引き上げ】

年金財政の逼迫は皆さんご存じのとおり。国は〈A〉年金保険料を上げ、〈B〉年金支給額を抑え、〈C〉パートなどに社会保険加入を促して年金の支え手を増やしています。

 

また、70歳まで働けるよう企業の努力義務を作り、年金の繰り下げを75歳まで可能にしました。年金の支給年齢が上がっても、高齢者が働いて暮らせる体制づくりが進んでいます。

 

支給年齢の引き上げはいますぐではないものの、選挙後に議論が始まりそうです。私たちはその行方を見守るとともに、選挙後に待ち受けるきびしい施策も考慮して、参議院選挙に1票を投じたいものです。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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