患者急増に医師が警鐘「オミクロンの後遺症はデルタより深刻」
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■オミクロン株後遺症で寝たきり状態を招くことも

 

「2月後半から、オミクロン株の後遺症で来院する患者さんが急増しています。多くの患者さんに見られるのは、激しい全身倦怠感に襲われる『筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群』という病気に近いタイプの症状。これは寝たきりの状態を招くこともある、恐ろしい後遺症です」

 

こう語るのは、新型コロナウイルス感染症の後遺症患者の診察を行っている「ヒラハタクリニック」(東京都渋谷区)の平畑光一院長。

 

同クリニックは’20年3月から、新型コロナの後遺症に苦しむ患者を約3,700人も診察している。

 

オミクロン株の感染が広がった今年1月以降のコロナ感染者で、後遺症に悩まされて診察に訪れる患者は、すでに200人以上にのぼるそうだ。そのうち約3分の2は女性の患者だという。

 

「じつは軽症だった人のほうが、倦怠感の強い後遺症になりやすい傾向があることがわかっています。“倦怠感”と一緒に、思考力が低下して頭が働かなくなってしまう“ブレインフォグ”などの症状も多く見られます。後遺症の観点では、これまでのデルタ株などと比べて、“オミクロン株が最悪”だといえます」

 

そのほか顕著に見られる症状として、気分の落ち込み、頭痛、せき、不眠などが挙げられる。

 

ヒラハタクリニックの統計では、オミクロン株による後遺症によって仕事に影響が出るなど、日常生活に支障をきたすことになった人はじつに76%にものぼる。デルタ株以前の後遺症より、明らかに深刻な数字だ。

 

平畑院長によると、2月初旬に後遺症を発症した30代の女性患者は、トイレも這って行くのがやっとのほどで、ほとんど動けずに家で寝たきりの状態になっているという。

 

「彼女には小さな子どもがいるのですが、育児もできない。仕事も休職。夫が彼女の介護と育児を一人で行っている状況です」

 

その夫も家事、育児、介護のために休職を余儀なくされ、経済的にも苦しい状況に追い込まれつつあるという。

 

「彼女は体がほとんど動かないため、オンライン診療で対応していますが、“このまま介護される状態がずっと続くことになったらどうしよう……”と、泣きながら相談を受けています」

 

デルタ株までの国内での感染者数は累計約170万人。その後オミクロン株に置き換わってから、感染者は約480万人も激増している。いかにオミクロン株の感染力が強いかがわかる。

 

海外の研究機関の論文では、新型コロナの後遺症は、感染者の10~30%が罹患するというデータも。

 

「これまで国内で約650万人が感染していますから、少なくとも現時点で、65万人の日本人に後遺症が出ている可能性があります。そのうち約50万人が、オミクロン株の後遺症になっていると考えると、かなり多くの人たちが、社会生活に支障をきたしているといえるでしょう」(平畑院長)

 

後遺症は一度よくなっても、ぶり返すことがある。そのため、完治したかどうかの判断が極めて難しく、後遺症と一生付き合うリスクもあるそうだ。

 

「後遺症については、社会的に周知されていないのが現状です。人生に与える悪影響は、コロナ感染そのものより、後遺症のほうが大きくなることが十分にありえます。後遺症で以前までの日常生活が送れなくなることもある。そういう現実をもっと知ってもらいたいです」(平畑院長)

 

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