■大会を目指すがゆえに“ブラック部活動”化してしまう
では、なぜ長時間もの練習を行うのか? それは大会やコンクールを目指すためだという。「大会の参加と練習の長時間化は非常にリンクしていると思います」と指摘する内田氏は、こう続ける。
「とりわけ強いチームになると、全国大会を目指すための県大会やブロック大会、あるいは地方大会といった予選があります。そのため、ほぼ毎月大会があるという状態になることも多いのです」
つまり大会を目指すがゆえに、“ブラック部活動”化してしまうというのだ。
そんななか、スポーツ庁は今年6月6日、運動部を対象に「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」を発表。そこには「大会の在り方」として、「生徒の心身の負担や保護者の金銭負担が過重にならないよう、国からスポーツ団体等に対し、全国大会の開催回数の精選を要請」するよう求めている。この提言は今後、文化部にも適用されるか注目されている。
このことを踏まえ、内田氏は「大会で優勝したいがために、長時間の練習をするなど頑張りすぎてしまう。それを回避するためには大会の参加を抑制したり、競技団体の協力を得ながら大会の数をできるだけ減らしたりすることが必要でしょう」と話す。
このような負担が懸念されるなか、生徒の保護者はどのように受け止めているのだろうか? 内田氏はこう推察する。
「総じて強豪校の場合、部活の方針に賛同している保護者が多数派だと思います。運動部であれ文化部であれ、子供が頑張って賞をとることに保護者自身が大喜びする傾向があります。保護者が反対しているなかでこういう問題が起きるというよりも、むしろ賛成する人が多いなかで起こってしまうのではないかと思います」
さらに大会などで“優勝する喜び”は、ハラスメントを覆い隠してしまうという。内田氏はこう解説する。
「部活に打ち込んだ結果、優勝すれば泣いて感動する。そこで感動や達成感を味わってしまうと、なかなかマイナス面に目を向けられなくなりがちです。ハラスメント的な問題があったとしても、結局、感動の声に押し流されてしまう。
かたや同じやり方を繰り返すことで、離脱者が出てしまうことも。それでも大会に優勝した成功体験が優先され、次の年も同じやり方を続けてしまうのです。勝つことや成果に目を奪われてしまって、なかなか少数派の子供たちの苦しみや心身の傷には目が向けられてこなかったということです」