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8月4日、日本生命は入院総合保険「NEW in 1」の入院一時金を、9月26日以降、最大40万円から最大30万円に引き下げると発表した。

 

この保険は従来の日額〇円×入院日数という入院給付金ではなく、日帰り入院でも入院初日にまとまった入院一時金が受け取れるのが特徴。それが受けて売り上げが伸びていたのだが、なぜ大切なセールスポイントの額を下げたのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■家族がどんな保険に入っているかの確認を

 

日本生命が入院総合保険「NEW in 1」の入院一時金を引き下げる背景には、新型コロナの感染拡大と自宅療養者の増加があります。

 

保険会社は’20年の新型コロナ発生当初から、入院できない自宅療養者にも、「みなし入院」として入院給付金を支給してきました。ただ’22年度以降、みなし入院による給付金が激増しているのです。

 

日本生命グループのデータですが、みなし入院による給付金は’21年度の1年間で約13万件、約199億円でした。それが’22年4〜6月の3カ月間で約26万件、約372億円と倍増。第7波に入った7〜8月はさらに感染者が増え、給付金はもっと増えるでしょう。冒頭の発表は、給付金抑制の苦肉の策といえます。

 

とはいえ、保険会社は保険金などを確実に支払うために「責任準備金」の積み立てが義務付けられています。ですから、給付金がかなり増えても、倒産の危機に陥ることはありません。自社の利益を優先して手を打ってきたのでしょう。

 

ただ最大手の日本生命が給付金引き下げに動いたので、他社も追随する可能性は高いと思います。

 

ここで間違ってはいけないのは、入院一時金が下がるのは「9月26日以降の契約」です。すでに加入中の保険は、契約時の保険金や給付金などの約束を、保険会社が勝手に変えることはできません。必ず契約のまま実行されます。

 

とすると、「どんな保険を契約したか」が重要ですが、皆さんは契約内容を覚えていますか。なかには、生命保険や医療保険などいくつも加入していて、「よく覚えていない」という方もいるのでは。

 

新型コロナはいまや、誰がいつかかってもおかしくない状況です。「いま新型コロナになったら」という視点で保険を整理しましょう。みなし入院の給付金申請に必要な書類も確認しておくと安心です。

 

加えて、新型コロナなどで突然亡くなってしまうこともあり、本人がどんな保険に加入していたか、わからなくなる場合もあります。

 

そんなときは〈1〉保険証券を探す、〈2〉保険会社から定期的に送ってくる郵便物を探す、〈3〉預金通帳で保険料の引き落としがないか確認するなどして、探してみてください。

 

それでもわからない場合は「生命保険契約照会制度」が使えます。生命保険協会が約2週間で、契約していた保険を探してくれます。手数料は1契約につき3000円です。

 

第7波の猛威が続いています。経済活動との両立が大切なのはわかりますが、岸田政権があまりにも無策で歯がゆくてなりません。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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