■障害のある子供たちが自立でき、そのとき彼らにやさしい社会が実現してほしい
「タケちゃ~ん、戻っておいで」
写真展の昼休みの時間に、会場近くの海の見える公園を訪れた内木さんファミリー。
車を降りた途端に駆け出した尊くんは、もう50mも先にいて、まだ走り続けている。そのあとを克親さんが名前を呼びながら追いかけ、さらに謙くんが続く。
「いつもの、わが家の光景(笑)。尊のおかげで、笑い声も絶えないし、教わることも多いです。
障害のある子供がいると、両親がその子にかかりきりになって、健常の子が寂しい思いをすると知り、毎月、『タケルがママを独占できる日』と『ユズルがママを独占できる日』も作りました。
「ほら、タケル。あっちは海だよ、オーシャン」 「オーシャン! オーシャン!」
ようやく戻ってきた尊くん、今度は海を目がけて走り出す。語学に堪能な内木さん夫妻は、幼いころから兄弟に英語で話しかけていて、家族の会話にはよく英単語が混じるのだそうだ。
海を見に行った母子を見送りながら、今度は克親さんが、
「夫婦でよく話すのは、僕たち親は子供より先に死ぬこと。だからこそ、障害のある子供たちが自立でき、そのときに彼らにやさしい社会になっていてほしい。彼女の仕事はそのきっかけになると信じ、家族全員で応援しています」
今後、キッズモデルたちの写真展は、12月21~27日に新宿髙島屋での開催が決まっている。
内木さんは、木更津での取材翌日に40歳になったが、これまでと変わらず、次のクライアントや写真展の会場を探して、今日も飛込み営業の電話をかけ続ける。
「いずれ60歳ごろまでに、里親や保護司を務めたいという思いもあります。もちろん、マザー・テレサがお手本。でも、まず今はキッズモデルを、もっと日本中の人に知ってもらうことが最優先。まだまだガラスの壁は厚いですけど」
ポンと背中を押してくれるのは、たくさんの無垢な笑顔たちだ。