■世間では夫婦2人だからぶつかり合う。われわれは4人だから話し合いになって喧嘩にならない
「私たちの子はそれぞれ2人ずつ。4人きょうだいのように育ったんです」
いまは全員家庭を持ち、自立している。子育て真っ最中のころの家族8人の記念写真を美智子さんと喜久子さんは目を細めて眺める。
’73年孝晴さん・喜久子さん夫妻に長男和孝さん(49)誕生。
忠義さん・美智子さん夫妻には’75年に長男忠司さん(47)、’77年に次男英司さん(45)、そして’78年に孝晴さん・喜久子さんに長女の美木さん(44)が誕生している。
「結婚当初、私とみっちゃんがいっぺんにお産をすると家の中が大変になってしまうから、ほどよく間隔を空けて出産をしようねって話し合ったの。結局、いろいろあって上から下まで5歳離れています」と喜久子さんが説明する。そして、お産をした病院でまたも、そっくりならではのエピソードが。
「2人とも同じ病院で産んだものだから、病院の看護師さんが、『え? 昨年産んだばかりで、もうできたの? 何人目?』と。『まだ2人目です。私は双子で、多分姉と間違えているんです』と答えると、『うそ。どう見ても同じ人よ』と信じてもらえなかった」
3男1女は12畳の部屋で4人一緒にスクスクと育った。大家族は当初長方形の食卓を囲んでいたが成長するに従い座り切れず、中華料理店にあるような回転テーブル付き円卓を特注し、にぎやかに暮らした。
「普通の夫婦は困難があれば夫婦2人で立ち向かうけど、わが家は親が4人もいて、知恵も倍出し合える。うれしい報せも2倍届きます」
と、忠義さん。
忠司さんは隣町で、孝晴さん・喜久子さんの長男和孝さんと、隣り合わせに家を建てて暮らしている。孫は全部で7人、まもなく8人目が生まれる。こうしてにぎやかに増えていった深見家だが、最近、美智子さんは、長男からこんな質問があったと語る。
「お父さんとお母さんは、2組ともどうして夫婦喧嘩がないの? よその家ではよくやっているのに」
と心底不思議そうに尋ねられたという。喜久子さんが引き受ける。
「世間では夫婦2人だからぶつかり合うのね。われわれは4人だから、なんでも話し合いなの。1人が『こうしたい』と主張しても、ほかの3人が『それはできない』と反対すると、1人の意見は通らないとわかっているから引き下がる。それで納得して終わりなの」
50年たっても笑いが絶えることのない深見さんご一家の、親密さの“秘訣”かもしれない――。