規制委員会は形骸化…岸田政権の拙速すぎる原発回帰方針を政府新会員が痛烈批判
画像を見る 規制委員会で反対を唱えた石渡委員

 

■経産省と規制委員会の間で根回しも

 

原発の安全性に関わる規制だが、委員会内での意見は分裂していた。5人いる委員のうち、石渡明委員が「60年以降にどのような規制をするのか具体的になっていない」と疑問を呈し「われわれが自ら進んで法改正する必要はない」と反対を表明したのだ。

 

にもかかわらず、安全性に関する重大な決定は多数決で採決された。その結果、冒頭のように賛成派の委員さえも“結論をせかされた”と苦言を呈する異常事態となってしまったのだ。

 

“独立した意思決定”を活動原則に掲げる規制委員会だが、その独立性が揺るぎかねないほど、岸田政権と歩調を合わせているように見える。

 

「今回の決定は、すべての面において強引だった」と指摘するのは経済産業省の原子力小委員会の委員でNPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長だ。

 

「規制委員会は、事務方である原子力規制庁にリードされるように議論を行っていました。というのも、規制委員会の議論が始まる前に、原発推進を担う経済産業省の職員が原子力規制庁の職員に根回しを行っていたことが発覚したのです。

 

規制委員会で運転期間が議題に上がったのは昨年10月ですが、7月時点で経産省は規制委員会が所管してきた運転期間規制を経産省に移管する方針と国会提出時期を規制庁に伝えていました。

 

規制委員会のメンバーが『せかされていた』と不満を口にしていたのもこれが理由でしょう。規制委員会は岸田政権のシナリオどおりに進められたのです」

 

これらの結果、老朽化した原発の危険性について十分に検証されぬまま、60年以上の運転が認められそうだ。伊方原発3号機の建設を手がけた三菱重工の元技術者だった森重晴雄さんは、そのリスクをこう警告する。

 

「核燃料が入った原子炉圧力容器が劣化することがもっとも大きな問題です。原発の心臓部である原子炉は炭素鋼で造られていますが、この素材は核分裂によって生じる高エネルギーの中性子線に弱く年を経るごとにもろくなっていきます。さらに原子炉を冷やすホウ酸水による腐食も問題。西日本に多い加圧水型の老朽原発は、原子炉をホウ酸水で冷却します。炭素鋼はホウ酸水にも弱く、補強するためにステンレスでコーティングしていますが、経年により隙間からホウ酸水がしみ込み腐食しやすくなるのです」

 

腐食が進むと、どうなるのか。

 

「原子炉は高温ですから、わずかでも圧力容器に腐食が生じると一気に亀裂が広がり、冷却水が漏れ、原子炉を冷やせなくなります。そうなると炉心溶融が進み、大事故につながる可能性もあるのです」

 

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