■“ツバメを守るだけじゃない”担当者が明かす取り組みの理由
「せんちゅうパル」が開業したのは、大阪・吹田市での「日本万国博覧会」開幕を目前に控えた1970年3月(開業当時は「千里サンタウン専門店街」)。今年で53年目を迎えたが、「ツバメがいつから『せんちゅうパル』に巣を作り始めたか、詳しいことは資料も残っておらず定かではありません」とのこと。
担当者はそう前置きした上で、「ツバメには帰巣本能があること、そして大きな鳥から守ってもらうために人間が多くいる商業施設をツバメが好むことなどの理由で、毎年子育てをしに帰ってくるようです」と語る。
Twitterでは「ツバメに優しい」と同施設の取り組みを絶賛する声が相次いでいるが、そもそもの目的は別のところにあったようだ。
「実は保護傘というよりは、第1の目的はお客様や商品に糞被害がでないためと、当施設の美観維持の取り組みです。傘の中も容易に掃除ができるように、紙を敷き、糞が溜まれば紙の交換をしております。
2023年度は現時点(7月5日)で、合計4本の傘を設置しました。全ての巣に逆さ傘を設置しているわけではなく、営巣し産卵された場所に応じて対応は様々です。傘を設置できない場所にはトレーを、トレーも設置出来ない場所にはカラーコーンで注意喚起した上で、糞除けシートを設置しております」
こうした工夫を施す理由は、半屋外空間に各テナントが軒を連ねて集まる「オープンモール」であることが大きく影響している。
「鳥獣保護管理法の観点からもツバメを保護していかなければならない反面、『せんちゅうパル』がオープン型かつ駅直結の商業施設であるため、皆様に快適に過ごしてもらう必要があります。当施設はオープンモールで、野鳥の出入りを完全に防ぐことが出来ません。駅直結で様々な方が利用される施設ですので、ツバメを喜んで見守ってくださる方や、糞被害や鳥が苦手な方もいらっしゃいます。
そのため、高所で日々のメンテナンスが行き届かないところや、エスカレーター回りには鳥よけを設置するなど対策を取っております。また、施設の防災システムに営巣されると正常に働かなくなる可能性があるなど、防災の観点から一部の場所は営巣を阻止しなければならない面もあります」