株高も多くの庶民には関係なし(写真:時事通信) 画像を見る

株価が史上最高値に。33年ぶり高水準の賃上げ。新聞にはそんな見出しが躍るが、恩恵を感じていない人も多いのではないか? いったいなぜなのか、専門家に聞いてみた。

 

「日経平均株価が4万円を突破して、史上最高値を更新しました。岸田首相は『私の政権になってから、賃上げや投資の促進などに特に力を入れ、経済政策を考えてきた』と成果を強調しています。日銀は今月中にもついに『マイナス金利の解除』を宣言する見通しです」

 

こう話すのは、市場の動向に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。東京株式市場は4日、日経平均株価が半導体関連の銘柄を中心に値上がりし、初の4万円を突破した。だが、“それは現実?”と目を疑う人も多いようだ。

 

「史上最高値ってバブル期以上? 物価が高すぎて買い物もできないのに」(50代パート女性

 

「夫の会社は業績が悪く、給与も現状維持がやっと。一体、誰が賃上げされてるの?」(50代専業主婦

 

なぜ株価4万円でも、庶民は恩恵を感じることができないのか。

 

「市場では『業績が上がっていたり、これから上がりそう』な会社の株価が上がります。しかし現在、利益を上げている日本企業の多くは人件費や外注費の削減で利益を上げている。全般的に企業の増益分が労働者に還元されていない状態が続いています」(加谷さん)

 

庶民は “好景気”の恩恵よりも、弊害を感じるほうが早くなりそうだ。40代以降には住宅ローンを組んでいる家庭が多いが、今月にも行われると噂される“マイナス金利の解除”によって、ローンの返済額が上がる可能性があるのだ。

 

■住宅ローン金利が3%の時代がくる

 

マイナス金利とは「政策金利をマイナスにする」政策のこと。お金を借りやすくすることで、市場のお金の量を増やす効果がある。

 

「日本はデフレ(物価が安い状態)脱却の金融緩和策の流れで2016年から『マイナス金利』政策、『ゼロ金利』政策をとっており、ここ数年は目標としてきた2%程度まで消費者物価指数が上がっていました。

 

これ以上の物価上昇を抑えるためにも、早ければ3月18~19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除に言及される可能性があります。さらに、秋口には『ゼロ金利の解除』を宣言して、『プラス金利』に引き上げて行く方針だと予想されます」(加谷さん)

 

マイナス金利 → ゼロ金利 →プラス金利、と上がっていけば、借金をしたときにかかる金利も上がることになる。

 

「借金を返済できない中小企業が出たり、住宅ローンの利率が上がって返済が滞る人が出たり、かなり影響が出るでしょう」(加谷さん)

 

実際に住宅ローンの返済額はどれくらい上がるのだろうか。生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんが解説する。

 

「今春にゼロ金利の解除宣言をした場合には、3カ月後の夏あたりから影響が出始めるでしょう。住宅ローンの変動金利は現在0.2~0.4%ほどですが、0.6%くらいまで上がると予測されます。

 

今後、日銀は政策金利を4%程度までには上げたいのだと思います。そうなった場合、過去の例から考えると、3%程度まではローン金利が上がると考えられます」

 

本誌は35歳時点で、変動金利で借入額3000万円の35年ローンを組んでいた場合の返済総額を試算した。金利がずっと0.3%だった場合には返済総額は約3160万円。しかし、15年目から、金利が毎年0.3%ずつ上昇し、最終的に3%まで上がった場合、返済総額は約3501万円と、341万円も増えてしまう計算になる。

 

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