■介護の仕事は私の誇り。「ボチボチ」と言われる日まで
「ただいま帰りました」
夜6時すぎ、誰もいない自宅に帰ると、仏壇に向かうテツ子さん。今年1月に87歳で亡くなった叶彦(かなひこ)さんとは恋愛結婚で、亡くなるまで懸命に介護したのもテツ子さんだった。
「今でも家でことりと音がすると、“お父さん?”って思ってしまうんです。ずっと家にいると寂しいですが、仕事に出ると利用者さんに元気づけられます」
毎日、朝の5時半には起床。利用者のデイサービスの送り出しがなければ、朝ドラを見てから、訪問介護に向かっている。午前、午後で6?7件ほど回り、帰宅するのは6時すぎ。連絡などは、詐欺電話対策機能がついた高齢者用スマホを駆使し、メールでのやり取りには、しっかり絵文字も入れている。
帰宅後もスタッフから仕事の相談電話があるが、世間話になり1時間近く長電話してしまうことも珍しくないため、就寝するのは夜11時くらいになってしまう。仕事の合間を見て通うヨガ教室や、24年間も続けているダンベル体操が健康の秘訣だ。
「訪問介護は木曜日にお休みをいただいていますが、木曜日ははつらつ教室があるので、ほとんど休みはありません。まる1日休めるのは1カ月に1日くらい。昔の同級生たちと会ったりするのですが『待って、待って、やっと会えた』って言われたりします」
テツ子さんにとって介護の仕事は誇りとやりがいそのものだからこそ、84歳にして、こうした充実した日々が送れるのだ。
「いつ辞めようと思っているかですか? 決めていません。続けられる限り、やらせてもらおうと。でも周りに『ボチボチ』と言われたら、それを限界だと受け止めようと思っています」
その日が来るまで、テツ子さんは愛車のハンドルを握って、今日も精いっぱい、介護する。
(取材・文:小野建史)