「6月に詰む」発言で話題・専門家語るナフサ危機「『どこが詰んでいないのか、逆に聞きたい』というのが正直なところ」
画像を見る 再来年3月末まで「石油の安定供給が可能」と主張してきた高市首相(写真:本誌写真部)

 

■境野さんが指摘する3つの懸念

 

「1つ目の懸念は、アメリカ産の比率が高すぎるということです。政府の資料を見ると、輸入の半分くらいをアメリカ産が占めています。これほど多いというのは、極端な言い方をすると、『塩が欲しいのに砂糖を大量に輸入している』ようなイメージなんです。というのも、アメリカ産原油は“軽質油”なので、今日本で不足している重油の原料があまりとれません。ですからアメリカ産だけでは足りず、結局は中東産と混ぜる必要があります。つまり、アメリカ産の輸入を増やしても、中東産原油が重要であることに変わりはないんです」

 

一時期より緩和されているものの、境野さんが指摘するように、重油の調達環境は逼迫している。とくに漁業分野では、漁船用燃料の確保に対する不安が続いており、現場からは供給や価格を懸念する声が上がっているのだ。

 

2つ目の懸念は、「継続的に調達できる見込みがたっていない」点だという。

 

「政府資料には、《8月以降は、その調達の4分の1が確保できなくなったと仮定した場合でも、備蓄を取り崩せば2028年3月までは安定供給が可能》と記載されています。

 

つまり裏を返せば、『100%調達できるようになった』のは“7月の調達分だけ”ということです。その数字をそのまま横に引き延ばして、『年をまたいでも大丈夫です』『2028年3月まで持ちます』という話をしても、あまり意味がない。実際に、石油元売りの担当者も『先が見えない』と言っています。だからこそ政府も、『もし4分の1(75%)しか調達できない状態が続いた場合でも、備蓄を取り崩せば供給できる』という前提条件付きの説明をしているわけです」

 

境野さんが指摘するように、7月の調達回復は、あくまで単月の実績にすぎず、8月以降の安定供給が見通せているわけではない。というのも、原油を取り巻く国際情勢は依然として厳しいからだ。

 

「世界規模で“原油争奪戦”が起きており、現在の国際市場では長期の安定調達を前提とした契約を結びにくい状況にあるのです」

 

こうした状況の中、3つめの懸念として境野さんは、「アメリカ産原油への依存度が高まることでの“政治的リスク”」を挙げる。

 

「世界の原油在庫は100日を切っていますし、アメリカの戦略石油備蓄も減少が続いている。アメリカ国内でも『今の状況で輸出なんかしている場合なのか』という意見が出始めています。これまでの言動から考えると、トランプ大統領の場合、エネルギーを政治的な交渉材料として使う可能性も否定できません。『これ以上は出せない』とか、『価格は3倍だ』とか、そういうことを言われるリスクも考えておくべきでしょう」

 

すでに、代替輸入先の半分をアメリカが占める日本。そのアメリカからの輸入が困難になれば、大打撃は免れない。

 

「もちろん政府も“調達の多角化”に向けて動いています。高市首相のXにも、《中南米、アジア太平洋、中央アジア、アフリカなどのほか、新たにカナダからの輸入が決まり、7月にはメキシコから初めて原油が届く予定。「原油調達先の多角化」が着実に進んでいます》と記されています。

 

ただ、実際に数量ベースで見ると、それぞれの国から入ってくる原油量はアメリカを除くと、ごくわずかです。何より日本からの距離が遠く、その分、輸送日数も長く、輸送コストも上がる。さらに船舶を確保しなければならないという問題もあります」

 

つまり、「調達先が増えた」という事実と、「安定的に大量調達できる」ということは全く別の話だ、と境野さんは強調する。

 

出典元:

WEB女性自身

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