■デジタル表現は対象外、しかし……
アニメやゲーム、生成AIによる画像など、デジタル空間で国旗が破られる描写については、処罰対象にはならないという。
「法律が対象にしているのは“有体物”です。デジタル画像は有体物ではありませんから、アニメやゲームで国旗が破られる描写があっても、この法律では処罰されません」
一方で、動画配信については、必ずしもそう単純ではない。
提案者である自民党は、「人目につかない場所で国旗を損壊し、その様子を録画したものを後から公開しても処罰対象にはならない」と説明している。
しかし江藤教授は、“公然”という要件については最高裁判例との関係から解釈の余地が残ると指摘する。
「名誉毀損罪では、その場に少数しか人がいなくても、不特定多数へ伝わることが予定されていれば“公然”に当たるという判例があります。同じ考え方が採られる可能性は否定できません」
もっとも、実際には警察や検察は提案者の説明を踏まえて慎重に運用する可能性が高く、「現時点では処罰されない方向だと思う」とも話す。
■処罰よりも「萎縮効果」を懸念
江藤教授が繰り返し強調したのは、「実際に有罪になるかどうか」と、「人々が萎縮すること」は別問題だという点だ。例えば、古くなった国旗を普通に処分する行為や、映画・演劇で国旗が燃える演出は、基本的には処罰対象にならないと考えられる。
しかし、それでも第三者が「違法ではないか」と警察へ通報する可能性はある。
「もし演劇の舞台で日の丸が燃えるシーンを入れたいと相談されたら、法律家は『やめておいたほうがいいのでは』と答えると思います。法的には問題なくても余計なトラブルに巻き込まれる可能性がありますから」
その結果、表現者が自主的に国旗を使わなくなる“萎縮効果”が生じかねないという。
江藤教授は、実際の運用では、警察や検察は起訴することにかなり慎重になるとみている。ただ、それでも「処罰しないなら処罰しないと条文で読めるようにしておくべきだ」と強調する。
「国会で『これは処罰しません』と説明しても、最終的に法を執行するのは警察や検察です。法律として残るのは条文ですから、処罰しないのであれば条文から分かるように書かなければなりません」
その上で、「何が処罰されるのかが曖昧なまま刑罰を設けることは望ましくない。もっと時間をかけて議論するか、あるいは刑罰そのものを見直すことも含めて検討すべきではないか」と警鐘を鳴らす。
画像ページ >【一覧表あり】古くなった国旗を捨てたら? 処罰可能性早見表(他1枚)
