福島県第一原発の事故により、20キロ圏内からの避難勧告が出された。郡山市内の避難所には、避難してきた多くの人が詰めかけていた。だが、彼らはスクリーニングと言われる被爆検査を受けなければ中に入れない。行列のなかで子どもの泣き声が聞こえてきた。

職員は皆、防毒マスクに防塵ゴーグル、頭まで全身をすっぽり覆う医療服に身を包むという異様な姿だった。検査を受ける70代女性は「指示をする人は完全防備なのに、避難する人はマスクだけ。心細いし、不安でしょうがない……」とその心中を語った。

二本松市の避難所では、大きく張ったお腹をなでている女性がいた。出産予定日を3月29日に控えるという原中君枝さん(32)だ。彼女はすぐ後ろまで津波が押し寄せる恐怖のなか、命からがらに避難所へとたどり着いたという。

出産予定の産院も被災し、途方にくれる日々が続く。それでも原中さんは、「何もかも失ってしまった。いつ陣痛が来るのかわかりません。でも、この子が生まれてくる。それだけが私たち家族の希望です」と語った――。被爆現場の悲痛な現状を、本誌でレポート!

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