「髪の毛、ほとんど目立たへんやろ? 色が黒いけどゴルフ焼けやないで」と、人懐こい笑顔で話すのは牧野隆志さん(48)。ブラックスーツにサングラス、巨大なプリンのかぶり物をかぶった異色男性デュオ『東京プリン』の片割れといったら、知っている人も多いのではないだろうか。だが、現在の牧野さんは当時の見かけとはずいぶん違っていた。

「しゃーないですわ。体重はけっこう落ちましたから。最初は、テレビであまり痛々しい姿は見せられないからと、副作用の少ない抗がん剤から始めたんですが、今、投与している抗がん剤は脱毛や色素沈着の副作用があるんです」

2年前に告知された牧野さんの肺がんは、発見された時点でステージⅣだった。ネットで検索すると『5年生存率は3%』だという。この日は、発病前から務めている仙台ローカル情報番組『あらあらかしこ』のメーンMCのため、自宅のある東京から仙台へ前泊で来ていた。

「僕の”生きる力”は、家族と仕事。家族があっての仕事ですし、毎週、仙台のレギュラー放送があるから体調管理ができて、元気に生きられる。本当に感謝です。がんにならな、こんな幸せに気づかへんかったかもな」

牧野さんには、37歳のときに知り合い結婚した妻のいづみさん(38)と息子の僚太郎くん(10)がいる。がんになってから家族で過ごす時間が増えた。昨年春、いつものように父子でお風呂に入っていたとき、牧野さんは「子どもの心に俺の存在を残したい」と唐突に思ったという。そして、息子の小さくて華奢な胸を指しながら話しかけた。

「僚太郎。ここに心のスイッチを作ろう。心のスイッチを押すと、お父さんやお母さんの明かりがともる。友達や好きな女の子の明かりがこれからどんどん増えていくんだ。心のスイッチを入れると、その人がどんなに遠くにいても、そばにいることができなくても明かりは必ずともる。だから、1人で寂しいなって思ったときには心のスイッチを入れてみてごらん」

僚太郎くんはキョトンとしていた。しかし、怒ると怖いお父さんが泣いていることはわかっていた。牧野さんはいう。

「でもいつか、将来、彼が挫折や孤独感を感じたときにふっとこの言葉を思い出してくれれば……。僕は彼の心の中に生きているんですよ」