7月2日にこの世を去った噺家・桂歌丸さん(享年81)。最後まで落語一筋だった師匠を支えたのは、妻の冨士子さん(86)だ。『笑点』では“鬼嫁”の代名詞として扱われてきたが、実際は真逆の“内助の功”タイプ。昨年、本誌が取材した際もこう語っていた。

 

「実は私、寄席を見に行ったことが一度もないんです。結婚するときに『カミさんは仕事場に来るな』と言われて。だから60年たつけど、行かないんです」

 

昔かたぎな歌丸さんのため、冨士子さんは奔走。今回の入院生活中も、歌丸さんのそばに寄り添い続けた。そんな冨士子さんは葬儀の準備で忙しいなか、臨床の様子を本誌に明かした。

 

「ひ孫が『じいじ、じいじ』と声をかけながら、あの人の手を握ろうとしたんです。手を出すので私が握ろうとしたら、横に振って『私じゃない』って(笑)。するとお父さんは喜んで手を動かして、そうしたらそのまま……。肩で息をしていたのにだんだん止まって、息もス―ッとなっていって……。ひ孫が握っているのがちゃんとわかっていたんでしょうね」

 

最愛の家族に見送られた歌丸さん。臨終の前、冨士子さんにこんな最後の言葉をかけたという。

 

「亡くなった2日の明け方、危篤だと呼ばれて病院に行きました。すると、まだ息子たちもいない二人きりのときに『迷惑をかけたな』と言ったんです……。そんなバカなこと言わなくていいのと私は怒ったんですが、『いろいろ迷惑をかけて、ごめんね』と謝るのよ。謝らなくていいと言ったら『苦労をかけた』と最後に言いました。だからね、私も『そんなこと言わなくていい。わかってるから』と答えました」

 

以前本誌が取材したときには「師匠からねぎらいの言葉をかけられたことがない」と語っていた冨士子さん。だが歌丸さんが最後に放った一言は、長年支えてくれた妻への感謝の思いだった――。

 

「いつも何も言わないと思ってたけど……」

 

照れくさそうにこう語る冨士子さんの瞳は、涙で光っていた――。