病室の外では昨夜から秋雨が降っていた。朝6時をむかえようとしているころ、ベッドに体を横たえる寂聴さんに、寂庵のスタッフたちは代わる代わる声をかけた。
「庵主さん、○○です……」
そのたびに寂聴さんは閉じていた目を少し開けて、その声がするほうへ、少しほほ笑んで見える顔を向けたという。
11月9日6時3分、瀬戸内寂聴さん逝去。享年99。一人娘のMさんや京都・寂庵の女性スタッフたちにみとられての旅立ちとなった。
コロナ禍で休止になる前の法話の会では、集まってきてくれた人々に、あの笑顔でこんな言葉をかけていた。
「それじゃあね、みなさんとは、もしかしたらもうお会いできないかもしれません。もし私の訃報を聞いたら、私は安らかに死んだと思ってください。安らかに死にますからね。 みなさんのお幸せを祈っています!」
そんな言葉どおりの穏やかなお顔だったというーー。