10年10月、徳島の法話の会で女性を抱きしめる寂聴さん(撮影:西田茂雄) 画像を見る

病室の外では昨夜から秋雨が降っていた。朝6時をむかえようとしているころ、ベッドに体を横たえる寂聴さんに、寂庵のスタッフたちは代わる代わる声をかけた。

 

「庵主さん、○○です……」

 

そのたびに寂聴さんは閉じていた目を少し開けて、その声がするほうへ、少しほほ笑んで見える顔を向けたという。

 

11月9日6時3分、瀬戸内寂聴さん逝去。享年99。一人娘のMさんや京都・寂庵の女性スタッフたちにみとられての旅立ちとなった。

 

コロナ禍で休止になる前の法話の会では、集まってきてくれた人々に、あの笑顔でこんな言葉をかけていた。

 

「それじゃあね、みなさんとは、もしかしたらもうお会いできないかもしれません。もし私の訃報を聞いたら、私は安らかに死んだと思ってください。安らかに死にますからね。 みなさんのお幸せを祈っています!」

 

そんな言葉どおりの穏やかなお顔だったというーー。

 

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