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住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、夢中になったアイドルの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’80年代”を振り返ってみましょうーー。

 

■不良っぽさと、男の寂しさ、せつなさが

 

「デビュー初期のマッチは、けっして歌は上手なほうではなく、音程を外し気味だと言われていました。またダンスに関しても、トシちゃんが抜きんでていました。ですが、マッチ独特の不良っぽさと、歌に垣間見える男の寂しさ、せつなさが、女子ばかりでなく、男子の心もつかんだのです」

 

そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。

 

牛窪さんが注目するのは、2枚目のシングル『ヨコハマ・チーク』(’81年)。

 

「同時期にリリースされた寺尾聰さんの『ルビーの指環』の大ヒットで、オリコンチャートで1位を取れなかった不遇の曲ではありますが、サビの手の振付は誰もがマネしたがる簡単なもので、クラスでも盛り上がったものです。曲の導入部は明るくアップテンポなのですが、途中で曲調がメロディアスに変わる部分があります。そのとき、マッチの表情もがらりと大人っぽく変わり、ふと曲の世界に引き入れられるんです。東京の中高生にとってヨコハマは、大学生や社会人が行く別世界のような場所で、曲を聴いて、大人の世界を想像した人も多かったはず。ジャニーさんはマッチの、独特の世界観を表現する力を見いだしていたのではないでしょうか」

 

この曲を素肌が見えるほど粗いメッシュのトップスやスケスケのシャツに、キンキラのジャケットを羽織って歌っていたマッチ。そのファッションは“ツッパリ”にも、大きな影響を与えたという。

 

「横浜銀蝿や“なめ猫”がブームになるなど、不良のファッションといえば硬派な学ランが基本でした。ところがマッチの出現によって、全国のツッパリが学ラン一辺倒から、カジュアルでセクシーなファッションにも憧れるように。概念に幅が生まれたのです」

 

ツッパリ・不良・ヤンキー系を意識していることは、5枚目のシングル『情熱☆熱風せれなーで』(’82年)からもうかがえる。

 

「伊集院静さん作詞、筒美京平さん作曲の、最強タッグによる楽曲。タイトルに星や月の絵を入れた点もユニークですし、『せれなーで』をあえてひらがなにしたのは当時、ヤンキー文化の“丸文字”をイメージしたとも報じられました。ちなみに、通常、セレナーデは男性が、女性の家の窓辺に向けて愛を伝える夜曲で、大人の告白のイメージですが、同曲は対照的にポップでキャッチー。そのギャップの大きさも、この曲のおもしろさの一つでしょう」

 

“初期マッチ”には、新しさが詰め込まれていたのだ。

 

【PROFILE】

牛窪恵

’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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