’24年の日本アカデミー賞最優秀作品に輝いた大ヒット映画『侍タイムスリッパー』。BS-TBSは昨年12月にスピンオフ作品となる連続時代劇『心配無用ノ介 天下御免』の制作決定を発表し、7月16日から放送予定となっている。ところが、撮影に参加するエキストラの“募集要項”が波紋を呼んでいて——。
「『心配無用ノ介』は『侍タイムスリッパー』の劇中テレビ時代劇として登場した作品で、BS-TBSでは1話30分の全6話が制作されます。監督、脚本、撮影を同映画と同じ安田淳一監督(59)が手がけ、今年3月にリニューアルした京都・太秦映画村が全面協力。撮影現場を一般に公開し、写真や動画のSNS投稿を促すなど話題性を狙ったPRも展開しています」(テレビ局関係者)
放送開始まで残すところあと3カ月を切るなか、安田監督は4月27日にXで“無償エキストラ”を募集。撮影日は5月9日で、5話・6話に登場する江戸庶民を演じる男女約20名を募った(以下、《》内はすべて原文ママ)。
そんななか、注目を集めたのは《募集させて頂く江戸庶民のエキストラ出演は「無償」になります。また衣装代・メイク代・カツラ代の実費7000円が必要になります》という参加条件だ。
安田監督は《当方からご提供できる価値》として、次の“5つの特典”を提示。
《本場の職人スタッフによりメイク、着付け、カツラ装着の体験》
《「心配無用ノ介 天下御免」の5〜6話に映る可能性の提供(確約はできませんが、なるべく皆さんを映せるよう配慮します)》
《安田監督からの直接演出体験》
《衣装で使われた輪袈裟を記念品として進呈》《安田監督との集合写真(キャストは確約できません)》
その上で、《大変心苦しいのですが、ご勘案頂いた上「それでも良い」と言う方のみご応募ください》とアナウンス。このほか掲載された募集要項では、集合時間は午前8時、終了予定時刻は午後5時頃、昼食は弁当支給などの詳細も記されていた。
本格的な時代劇の衣装を着て参加できるということもあり、安田監督の投稿には次のような反響が。
《お金を払っての役者体験と考えるなら、楽しそうですね》
《テレビ時代劇に貢献出来るならしたいです!》
《時代劇ファンに降ってわいた 夢のようなお話 参加費?喜んで! 有名俳優が出ていようといまいと関係ない ただ時代劇の雰囲気を味わいたい それだけなんです 後はこの狭き門に当選するかどうか…》
だが反対に、《ええ?? 7000円払ってエキストラするの?? 貰えるんじゃなくて払うの!?》《気合の入った“やりがい搾取”やなー コレ、やりがい搾取のお手本以外の何物でもないぞ》などと異論の声も散見されている。
賛否両論の意見は安田監督にも届いており、“こんなふざけた要求を聞いたのは初めて”と批判するユーザーには《お怒りごもっともかと思います。謹んでお詫び申し上げますm(_ _)m》と謝罪。
また、“時代劇が衰退する理由がわかる”との意見には、《とにかくお金がかかるので、民放さんが製作するのは至難の技です。ですが今こそ「庶民の悲しみや怒りを代弁する者」として時代劇ヒーローが必要との思いがあります》と説明していた。
さらに『侍タイムスリッパー』にアクション監督役として出演した夏守陽平からも、こんな批判が。
《正直、今回ので俺はがっかりしたよ。俺だけでなく役者からは失望されて当たり前。 結局はタダで使えるボラエキを使うのかよ。スターで映画を作るのではなく、映画でスターを作るってのはリップサービスか。蒲田行進曲は何を描いていた?大部屋俳優は金を払う価値もないのか?》
この意見に安田監督は《お気に召さず申し訳ないです》と前置きした上で、切実な懐事情をこう釈明していた。
《今回の規模感では無償のボランティアエキストラさんに頼らねばならない局面もあるという事をご理解ください。もちろんその事が仕出しの俳優さんにお金を払う価値もないという意味ではありません》
《それどころか本当は全員プロの俳優さんで固めたかったくらいです。ところが予算の都合で無理なのです。それでも作品の説得力を失わないため、無償のエキストラさんに実費まで負担して頂いてご協力を仰ぐという判断をしました。無償で手伝っていただくという事を、我々が喜々としてやっているわけではない事だけはご理解くだされば嬉しいです。 それと「映画でスターを作る」と言うのはリップサービスではありません》
《今回はテレビ時代劇を作る中で「心配無用ノ介」を劇中劇の中だけでない、本物のスターにしようと考えています。がっかりさせたのは申し訳ありませんが、諸先輩の話を伺い、手の内にある予算で少しでも良いものを作ろうとしている事だけはわかって頂けると嬉しいです》
前出のテレビ局関係者は言う。
「時代劇の扮装スタジオでは役どころにもよりますが、かつらやヘアセットなしで3,000円台〜1万円台の価格が相場だといいます。かつらやヘアセットを含めると料金が上がるので、7,000円を支払ってエキストラ出演できることに “お得”と受け止めた時代劇ファンもいたようです。いっぽう、役者を本業としている人からは“プロの仕事を奪う”といった懸念も。実費負担が伴うにもかかわらず、“無償エキストラ”というキャッチコピーはインパクトが強すぎたのでしょう。実際には予算が足りなかったため苦肉の策という事情でしたが、別の伝え方であればここまで波紋は広がらなかったかもしれません」
とはいえ、議論が巻き起こったことで作品の注目度が上がったのは間違いないだろう。
