外山啓介 6回目となるリサイタルツアー開始 今年のテーマは名曲『展覧会の絵』

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とやま・けいすけ★

84年生まれ、北海道出身。5歳からピアノを始め、東京藝術大学在学中の20歳のとき、第73回日本音楽コンクール第1位を受賞。07年1月、エイベックス・クラシックスよりCDデビュー、これまでに5枚のアルバムをリリース。

ピアノ・リサイタル『展覧会の絵』

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(C)Ayumu Gombi

8月1日(水)、サントリーホール(東京)ほか、大阪、愛知など10か所で開催。ツアースケジュールなどの詳細はオフィシャルウェブサイト(keisuke-toyama.com)まで。
問い合わせ:チケットスペース(03-3234-9999)
協力:タカギクラヴィア株式会社

 

――リサイタルを控えて、今のお気持ちは?
「怖いですね。追い込むのは2週間くらいまえからなんですが、気持ち的にはだいぶ切迫してきています(注:取材が行われたのは5月下旬)」

――このような、全国を回るリサイタルツアーは何回目になりますか?
image「6回目です」

――6回目なら、経験もあって、ちょっと余裕もできて……とはならない?
「身を削る作業なので、何回やっても怖いです。やはりクオリティは維持したいし。じゃないと、いらしていただくお客さんにも申し訳ないですから」

――今回のツアーのテーマは?
「『展覧会の絵』です」

――誰もが耳にしたことがある有名な曲ですね。
「よくコマーシャルで使われていますよね。ロシア人の作曲家、モデスト・ムソルグスキーの曲です」

――これを選ばれたのは外山さんご自身なんでしょうか。
「そうです。いろんな方に相談をさせていただいて、決めました」

――その理由をお聞かせください。
「2
年くらいまえ、僕の大好きなピアニストであるレイフ・オヴェ・アンスネスの『展覧会の絵』をCDで聴いて、すごく感動したんです。いろんなピアニストがこ
の曲を弾いていますが、アンスネスの演奏したものは、自分の中にぴったりハマッて。それで、自分でも演奏してみたいと思ったのがきっかけです」

――外山さんのリサイタルにいらっしゃる方は、どんな方が多いのでしょうか。
「親子連れの方をよく見ますね。小さい子供と若いお母さんとか」

――そのお子さんが、外山さんのようなピアニストを目指している、ということなんでしょうか?
「だとうれしいんですけど(笑)。サイン会などで話す機会はあるんですけど、なかなかそこまで聞くことができないので」

――若い女性のお客さんも多いとお聞きしました。ステージから見ていて「今日は女性が多いな」と感じることはありませんか?
「客席って暗いから、ステージ上からは意外と見えないんですよ(笑)」

――『イケメンピアニスト』と呼ばれることに対して、ご感想は?
image「自分ではイケメンと思ってないので、逆に『すいません』っていう感じです。でも何より、ピアニストは音で勝負ですから」

――デビューされて5年たちましたが、この5年間はいかがでしたか?
「いろんなことがありました。その間に、2年ほどドイツに留学して、仕事に対しての考え方も変わりました。日本中のいいホールで演奏させていただいたりと、幸せな5年間だったと思います。大変だったこともありましたけど」

――アマチュア時代とは、どういうところが変わりましたか?
「プロとしてデビューしたてのころは、弾かせていただくことに精一杯でしたが、今は『どのようにしたら、お客さんに満足していただけるか、喜んでもらえるのか』を考えています」

――留学して演奏にいい影響が出たと思いますか?
「ヨー
ロッパの“季節”を体験できたのはよかったな、と思いました。僕らが演奏する曲は、ヨーロッパの人が書いたものが多いじゃないですか。その人たちが、どう
いう季節感の中で曲を書いたのかというのは、そこに住まないと分からないので。僕が住んでいた北ドイツのハノーファーは本当に天気が悪くて、冬は3カ月間
くらい、ずっと曇っているんです。でも春になると、花が咲き乱れて、人も家から出てくるようになって。そういう季節の移り変わりを感じられたのが、貴重で
した」

――作曲家が曲を書いた環境を知ったことが、演奏に反映されている、と。
「そ
れを知ると知らないでは、(演奏も)違うだろうと思います。小さいころは、(ピアニストとして)自分はヨーロッパの人間にならないといけないと思っていた
んですけど、そうでなくていいんだ、と思うようになりました。リズム感も歴史も、ヨーロッパと日本は根本的に違う、でも、真似をする必要はないんだ、と。
それから『日本ってすごくいい国だな』って思えたのが、留学の収穫のひとつでした」

――外山さんは、ピアノを始められたのが5歳ということですが、きっかけを教えてください。
「テレビで音楽教室のCMをやっていて。それをみて『あ、これ弾きたい』って言って、習わせてもらったのが最初です」

――それが第一歩?
「はい。それから教室に通うようになりました。それで、習い事のひとつだったのが、だんだんプロになりたいと思うようになって、今に至るという感じでしょうか」

――最初にプロを意識したのは何歳ですか?
image「小さいときから『大きくなったらプロになるんだ』と思っていて、その気持ちに何の疑いも持ちませんでした。でも、気楽でしたよ。親がピアノや音楽について知
らないので、練習も強制されず『止めたいなら止めていいよ』という感じだったので。ピアニストになりたいと言ったときも『がんばってみれば?』という感じ
でした(笑)」

――東京藝術大学在学中の20歳のとき、第73回日本音楽コンクール第1位。併せて増沢賞、井口賞、野村賞、河合賞、聴衆賞を受賞しました
「うれしかったですね。5つ同時受賞というのは、僕が初めてではないですが、僕を知っていただくきっかけになったと思います」

――普段はクラシック以外にどんな音楽を聴いているんでしょう?
「小さいころから好きなのは、Mr.Childrenです。ほかに、ポップスでもロックでも、気分でなんでも聴きます。もちろんクラシックも。カラオケにも行きますよ」

――今後は、どんなピアニストになりたいですか?
「これはずっと思っていることなんですけど、“音”で勝負できるピアニストになることです。ピアニストは自分の思っていることを、音でしか伝えられない。ですから、音色とか響かせ方とか、総合的に音で勝負できるようになりたいと」

――では最後に、リサイタルに向けての意気込みなどをお願いします。
「プログラム全体に、いろいろなものを集めています。来てくださったお客さまと、ぜひいい演奏会を作っていきたいと思います」


撮影協力:タカギクラヴィア株式会社

 

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