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ある日、東京に住む、娘(松本穂香)が帰省すると、父親が亡き母親の格好で生活していた。そして居候の男性と家族になると言いだして――。映画『おいしい家族』(9月20日公開)は、少しとっぴな状況ながらも、父親・青治を演じる板尾創路(56)の圧倒的な存在感に見入ってしまう。温かくて不思議な作品だ。

 

「青治は人が好きなんだろうなと思いましたね。ジェンダー的なことや性別を超えて、人との関わりが好きなんだろうと思って演じていました。そこに愛情がちゃんとあれば、常識にこだわらない人たちがいる世界なので、人間として普通に演じていけばいいのかなって。いわゆる役作りみたいなことはしていないですね」(板尾・以下同)

 

それ以外にも青治の息子は外国人と結婚したり、自分の性に悩む少年が登場したり……と、最近よくいわれる、多様性を体現している人たちが描かれていく。

 

「僕もどちらかというと国籍とか、男が男を、女が女を好きになったりとか、別になんでもいいんじゃないかなと思うタイプなので違和感はありませんでした。周りにこういう人たちがいますし」

 

常識にとらわれない登場人物たちが肝であるのは当然なのだが、タイトルにあるとおり、料理や食べることも重要な役割を果たしている。見ていてその料理を食べたくなってしまうのだ。

 

「そこに意思が生まれてきますよね、食べ物はね。食べて気持ちが動くというか、愛情を持って作られたものを体に入れることはすごい力を持っている、というのもテーマにあると思います。料理ですか? (家で)手伝ったりすることはありますけど、全然です(笑)。料理ができる男の人にちょっと憧れがありますね。こういうお父さんはいいなって思います」

 

そう話す板尾は、芸人というよりも、すっかり俳優としてのイメージが強い。

 

「おっしゃるとおりですよ。こっち(俳優)の仕事しかいない。もう、この年齢なので。この年代でコメディができないというわけではないですけど、笑いってその時代のネタとか、若い感性のほうがね。僕らはいろいろとやらせていただいたので。それがあっての今ですから」

 

映画の中で青治のように終始落ちついて淡々と話す姿が印象的だ。

 

「おいしいものを食べて、人と触れ合って、みんなと認め合って生きていけば、幸せなんだろうなということを作品から感じてもらえれば作ったかいがあるかな」

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