いよいよ新米の季節! 8月中旬に宮崎や鹿児島など九州地方の新米が出荷されたのを皮切りに、四国、千葉、茨城……と「新米前線」が北上中。だが、お米は同じ銘柄でもその年の天候によって、味も微妙に変わってくるという。
「今年は都心でも記録的な長雨となりましたが、日照不足で“登熟(お米が甘く熟すこと)”が進まず、生育が悪い傾向にある産地も見受けられます。ただし、それは限定的で、同一県内や地域でも生育の良しあしがまったく違うのです。これがいちばんの特徴といえるでしょう」
そう語るのは、5ツ星お米マイスターの澁谷梨絵さん。たとえば新米出荷一番乗りの九州地方でも、ある地域では雨が多かったのに、別の地域では高温の日が続いたりと、ポイントごとにまったく状況が違っていたそう。
「隣り合っている町でも、かたや水害に遭ってしまったけれど、かたや豊作という具合です。例年は『東日本は豊作だけど、西日本は不作気味』などおおざっぱに分けることもできますが、今年は細かいエリアごとに生育状況の差が激しいですね」
現時点(※9月上旬)では米不足の心配もなさそうだという。では今年の新米選びのコツとは? 澁谷さんが教えてくれた。
【1】まずは「米袋」の情報をチェックしよう
「販売されているお米には明記すべきことが決められていて、スーパーで売っているお米にもさまざまな情報が隠されています。ちなみに『新米』と表記していいのは、秋に収穫されてからその年が終わるまでに精米されたものだけです。特に精米日は必ずチェックしてください。精米したてがおいしいのです。生産者情報がきちんと表示されているものは、そのお米が大切に育てられた証しです。それらを見ずにお米を買うのはもったいない!」
【2】町単位まで絞り込んで購入しよう
今年は同じ県内でもエリアごとに生育状況がまったく異なるという。
「県や地域だけでなく、町単位まで限定して購入するのがおススメです。さらに言えば、同じ町内でも生産者が変われば味が変わってきます。1つの田んぼにぎゅうぎゅうに稲を植える人もいれば余裕を持って植える人もいますし、土に対するお金のかけかたも人それぞれ。最近は土の成分を測定し、足りない肥料を加える農家さんも増えてきています。ベストは生産者まで絞って購入することです」
そうは言っても、誰のお米を指名買いするべきか、初心者には難しそう……。
「そうですよね(笑)。だからこそ、新米時期にいろいろな種類を少しずつ食べ比べていただきたいのです。新米前線北上とともに、さまざまなエリアのお米を1キロずつぐらい少量買いし、ぜひ北海道まで試してみてください。きっと“自分好みの味”に出合えるでしょう」
【3】甘味を重視する人は今年は「より甘い品種」を
「現時点で出荷されている新米に限っての話ですが、やはり日照不足が関係しているのか、味の傾向はあっさりめ。たとえば昨年の宮崎県西都市のコシヒカリはとても甘味が強かったのですが、今年はそれに比べてさっぱりしていました。もし甘いお米が好きな方なら、今年はいつもよりさらに甘めの品種を試してみてもいいでしょう」
【4】価格を重視する人は「地産地消米」を
お米の価格は、4〜5年前に比べると値上がり中。今年は天候不順も加わって、さらに1割ほど値上がりする可能性もあるという。そこで注目したいのが、地元でのみ作られるお米=「地産地消米」。
「人気銘柄のコシヒカリは、常に相場が高く設定されがち。天候不順の年に量が足りなくなると、当然価格も上がりやすくなるのです。でも各県にはほとんど県内で消費されている地元品種が3〜4種類ずつあり、こちらは配送料がかからないぶん価格も手ごろ。その土地に合った品種なので、味もハズレが少ないのが特徴です」
【5】東北のお米が大当たりになるかも
これから収穫時期を迎えるのが東北の新米。やはり雨の影響は心配だが、今後の天候次第では、例年以上においしくなるチャンスも!
「お米は花が咲いてから毎日の気温を足していき、積算温度が1000〜1200度ぐらいになったら刈り取るのがちょうどよいと言われています。本来は45日程度なのですが、近年は温暖化の影響により、30日ほどで1000度を超えることも。でも、あまり早く熟しすぎると、今度は味が乗っていかないという欠点もあります。しかし今年は8月の天候不順の影響で、時間をかけてしっかり熟すはず。そうすれば、とてもおいしいお米になるのです!」