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日本各地で開かれている朝市。石川県「輪島朝市」が千年を超える歴史を持つように、朝市は多くの日本人に親しまれてきた。いま、朝市で売られているのは旬の野菜や鮮魚だけではない。それぞれの地域で、いろいろなお得感が味わえるユニークさが話題を呼んでいる。そんな朝市名物を求めて、時には夜明けより早く行列ができ、多くの人が詰めかけ瞬時に売り切れるものまであるという……。

 

■神奈川県・葉山町「絶大な人気の限定タルト」

 

11月初旬、朝6時半。この日は風が強く、気温も14度とひんやりしていた。葉山港の門をくぐると、スタッフが2時間後のオープンに向けて準備を進めていた。しかし、すでに50人ほどの行列が! 前方に並んでいた30代の男性に話を聞くと……。

 

「夜勤終わりに小田原から1時間かけてバイクで。3時に着きました。今日は母の誕生日なので、名物でおいしいと聞いたタルトを購入します」

 

1年で5回もリピート中だという神奈川県鎌倉市から買いに来た40代男性や、4時起きで埼玉県さいたま市から訪れた50代夫婦などで、8時前には100人を超す大行列に。

 

並んでいる人たちの狙いの多くは、葉山で45年続く人気洋菓子店「ラ・マーレ・ド・チャヤ」の朝市限定・数量限定のワンホールのタルト(1,000円)とバタークリームを使ったチョコレートケーキの切り落とし。なんと1,000円相当の量の切り落としが入ったパックが、1つ100円! この日も、洋なし・オレンジ・アップルの3種類合わせて約100台のタルトと、大量の切り落としが15分で完売!

 

でもどうして朝市にスイーツが? 同店の中山修一さんはこう語る。

 

「’90年にこの朝市を立ち上げた発起人は、うちの先代の社長や牛肉店などのメンバーでした。鮮魚や野菜を扱う店ではなかったので、スイーツやコロッケ、オリーブオイルなど、漁港の朝市っぽくないものが並ぶ形になったんです」

 

洋菓子店「ブラウン スイーツ」は特製ケーキ「葉山ロール」と、現地でとれたレモンを使ったチーズケーキのセットを1,000円で販売。スイーツ以外にも、酒店「リカーズかさはら」のテントには、昭和34年に天皇皇后両陛下のご成婚記念として植えられた夏みかんで作られた「夏みかんワイン」が並ぶ。さらに、「釜揚げしらすピザ」2枚に加え「トロのたたき」と「貝柱のおつまみ」のセットを2,000円で売る店舗も。

 

葉山港は穏やかな海の向こうに富士山を眺められる絶景地。朝市には名古屋や仙台、大阪からも客が訪れている。葉山の朝市を27年間取り仕切るマネージャーの五助さんは、行列ができる理由を次のように教えてくれた。

 

「20店舗ほどの小さな朝市ですが、各店舗の商品がおいしいのはもちろん、ロケーションがすごくいい。それにお店の人たちは、お客さんが質問したら優しく答える。気持ちのよい会話があるから、来てよかったと思ってまた足を運んでくれるんだろうね」

 

人と人とのふれあいで人気を培ってきた葉山の朝市。リピーターを抱えるのも納得だ。

 

【ハヤマ・マーケット日曜朝市】

 

住所:神奈川県葉山町堀内・葉山漁協前

日程:毎週日曜日(お盆・正月を除く)朝8時半〜10時半

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