昨年度に比べ、盛り上がりが沈静化しているといわる今年のハロウィン。10月最後の連休である26日、27日も、渋谷をはじめとした街中で、目立った騒動は確認されなかった。市場規模推移においても、ハロウィンの市場規模は2016年の1,345億円をピークに、2017年が1,305億円、2018年が1,240億円、そして2019年が前年比約7%の約1,260億円と右肩下がりだ(記念日文化研究所)。
ハロウィンの市場規模縮小にはどのような理由があるのだろうか。食を切り口に、食トレンド研究者の渥美まいこさんに話を伺った。
■2019年のハロウィンは“ジャック・オー・ランタン離れ”が特徴。ダーク演出が控えめに
「ハロウィンの市場規模は年々縮小傾向で、今年は“ハロウィン商戦”という言葉もあまり聞かなくなりました。以前なら、ハロウィンに合わせて商品を仕掛けていたメーカーやコンビニオリジナル商品も、今年は多少雰囲気が違う印象です。今年の特徴の1つ目は、モチーフが“ジャック・オー・ランタン離れ”であること。ハロウィン色を全面に出していたり、指や血がグロテスクに表現されたものもありましたが、ジャック・オー・ランタンやコウモリへの既視感による購買力低下が顕著となり、各社ハロウィンの商品の在り方を再定義している印象です。分かりやすいアイコン的なハロウィン感の演出から、黒や赤、マジックなどをテーマとした商品化が目立ちました」
「例えば、ローソンの『赤りんごケーキ』には、おばけやかぼちゃなどのモチーフはありませんが、実際に食べてみるとリンゴの果肉入りという“仕掛け”があって面白く、SNSにも投稿したくなる商品になっていると思います。2つ目は“味の縛りからの解放”です。従来のハロウィン商品は、かぼちゃ味や紫芋味などが主流でしたが、今年は色や仕掛けなどの視点でハロウィン感の演出をしているため、味種はとても自由度が高くなったとように見て取れます」
■背景にはハロウィンの全世代化 高齢者・一人でも楽しめる行事へ
背景には、若者向けの行事だったハロウィンが、高齢者から子供のいるファミリー層まで幅広い世代が参加するものに変わったことがある。渥美さんは、今年の子育て世代へのハロウィンの浸度合いについてこう語る。
「未就学児のお子さんがいる家庭では、入学式、夏祭りと運動会に並んでハロウィンイベントが保育園や幼稚園で行われます。家庭でもハロウィンの話題になるので週末のママ会などで仮装して楽しんだり、町内会で練り歩きを企画されていることもあります」
コンビニチェーンのセブンイレブンは、和菓子やプリンど定番商品のハロウィン版も発売。シニア層や都市部の独身層の利用が多いコンビニでは、“高齢でも”“お一人様でも”手に取りやすいハロウィン商品が展開されている。
■定番ブランドもハロウィン化し、誰でも手に取りやすいシーズナル商品へ
また、新商品だけでなく、既存人気ブランドの“ハロウィン仮装”にも注目だ。渥美さんは、こう語る。
「例えば、カルビーから出している『じゃがビー 黒いコンソメ味』はキャラクターがいたずらをしてお菓子が黒くなってしまったというコンセプトですが、味は鉄板で美味しいコンソメ。既存商品のファンが手に取りやすい、今年度らしい商品だと思います」
※店舗によっては、取扱いのない場合や、売り切れで販売終了の場合があります。
地味化したように見えるハロウィンだが、日本での消費者の生活に根付いてきたのだとの見方もできる。来年はどのような商品が出てくるのか、大いに期待される。