お正月シーズンお餅を食べる機会も増えるが、そのお餅に巻く海苔が食べられなくなるかもしれないという。
ちょうど今は新海苔のシーズン。新海苔とは、最初に収穫される『初摘』のもの。
『一番摘み』とも呼ばれ柔らかくて香り高く、味がよいのが特徴だが、この海苔にも値上げの危機がおとずれている。
おにぎり専門店では、一個360円のたらこのおにぎりが430円に。
記者の近所のお弁当屋さんも最近になって海苔弁当を100円値上げした。店主はこう嘆く。
「海苔にお米、肉、野菜、それに容器まで値段が上がっています。ご飯とおかずがないと弁当は作れない。これ以上海苔が値上がりしたら、もう海苔弁は出せないかもしれない。でも、みなさん海苔弁好きなのよねぇ。ホント、困った」
さまざまな食品の値上げに加え、海苔まで値が上がったら、海苔弁当のみならず、お正月のお餅に海苔を巻くこともできなくなるかも。
「この2年くらいの間に、海苔の入札価格が1.5倍くらいになりました」
と語るのは、佐藤海苔aeru・取締役の本田英里子さん。
「理由は大きく3つあります。
まずは皆さんがよく耳にする、地球温暖化の影響です。
猛暑が続いたことで植物プランクトンが大量発生し、ただでさえ不足している栄養分を食べてしまうと、海苔は栄養分をほとんど吸収できなくなります。
次に、例年の半分程度という雨の少なさと、山からの栄養源の不足です。
海苔が育つのに必要な栄養源は、山に降った雨が川から海に流れ込むのですが、樹木の伐採などの理由で、山の栄養分が不足しています。
さらに、高齢化による後継者問題です。海苔の漁は思ったより重労働です。
海苔の種付けは9月下旬から10月下旬にかけて行われ、水温が低くなる11月頃になると、色よく育った海苔の摘み取りが始まります。
有明のように夜中に摘んでくる 夜摘は、かなり体力を使います」(本田さん・以下同)
海苔養殖には、海底に支柱を建て込んで海苔網をぶら下げる『支柱式養殖』と、網の周囲に浮きを付け、海面に浮遊させる 『浮流し養殖』の2つの方法がある。
高級海苔の産地である有明海では、そのほとんどが支柱式で養殖されている。
「海苔の養殖は、海の状況や天候、風などに応じて、こまめに管理してやらなければならないのです。それによって海苔の品質が大きく違ってきます」
今まで海苔と言えば、日本一の生産量を誇る、有明海苔(福岡県・佐賀県)、次いで兵庫県、熊本県産の順に多いと言われてきた。
「全国的に海苔の生産量が減り、近年は兵庫もしくは熊本、次に佐賀、福岡と生産量が逆転しました」
このまま、生産量が減ると、海苔が食べられなくなる日が来るかもしれない。現在、スーパーなどでは以前の価格で店頭に並んでいるが……。
「大手の海苔問屋は、倉庫に保存しているので、以前に入札した海苔は当時の価格で販売していると思います。でもストックがなくなった時には、値段は上がると思います」
ゆくゆくは海苔もトリュフのように高級品の部類になるのだろうか?
「もともと、海苔は木箱に入れられた献上品でした。今のような庶民の食べ物になったのは、戦後のことで、贅沢な食べものだったのです。
ゆくゆくは、海苔やワカメ、昆布は、お正月やお歳暮などの贈答品、高級な食べ物になるかもしれませんね」
確かに、新海苔はお歳暮などの挨拶によく使われている。今後は海苔もぜいたくな贈答品に返り咲いてもおかしくないのだ。
これから海苔を購入する人に向けて、本田さんは次のようにアドバイスする。
「海苔を購入する際は、アルミ製の袋入りの品がお勧めですが、袋を開けたら缶などの密閉容器に入れて早く食べきることですね」
海苔の高騰が始まるまえに、蓄えていた方がいいかもしれない。