「手足口病が大流行しています。4歳以下の子どもがかかることが多い病気ですが、成人も人ごとではありません。しかも、大人が感染すると症状が重くなる傾向に。嘔吐や頭痛を伴う場合は、髄膜炎を発症し、急性脳炎に進展してしまうことも。コクサッキーウイルスが原因のときには、心筋炎を合併した報告もされています」

 

こう語るのは順天堂大学教授で自律神経研究の第一人者・小林弘幸先生だ。手足口病とは文字通り、手のひら、足の裏、口の中に水泡状の発疹ができる病気。初期症状が風邪に似ていて発症に気づきにくく、あせもと間違われることも多い。コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどが原因の感染症だ。

 

高温多湿を好むウイルスのため、7〜8月が発症のピーク。国立感染症研究所が8月6日に発表した時点での感染者数は、過去最悪だった2011年の年間累計35万人につぐ勢いだという。なぜ今年はこんなに流行しているのか?

 

「私の仮説ですが、’11年には東日本大震災があった。震災による過重なストレスで、大人も子どもも免疫力が下がり、ウイルスに感染しやすくなったのでしょう。今年は、猛烈な暑さと頻発する局地的豪雨。異常気象が影響していそうです。人間は大きなストレスを受けると異物を排除する血液中のリンパ球の活性が、下がってしまいます」

 

人間の体温を超える異常な暑さによるストレスはもちろん、炎天下からのゲリラ豪雨は、気圧を乱高下させる。

 

「気圧の急激な変化は人間の自律神経を乱れさせ、とくに副交感神経の活性が下がってしまいます。副交感神経の働きが衰えるとリンパ球の活性は下がってしまうので、やはり免疫力は低下。その結果、ウイルスに感染しやすくなったのだと思います」

 

手足口病のピークは8月までといわれている。しかし、今年は残暑も厳しい見込みで、秋以降も予断を許さないという。では、対策は?というと……。

 

「一にも二にも感染の予防。手足口病には特別な治療法はなく、ワクチンもありません。主な感染経路は飛沫感染や接触感染なので、手洗いとうがいをしっかりと。そして『疲れたな』と感じたら無理せず休養を。手足口病に限らず、猛暑による夏バテも増えている今夏。安静は副交感神経の働きを高め、血流を活性化し血液中の免疫システムも活発にしてくれる、もっとも効果的な方法です」

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