「農薬などが原因で健康を損なう化学物質過敏症は病気として認められているのに、携帯電話や電子機器が原因の電磁波過敏症については、日本では病気として認められていません。すでにスウェーデンなどの北欧の国では正式に病気と認定され、アメリカやイギリス、フランスなどでも子どもや妊婦に対し携帯の使用制限をしています。医療先進国であるはずの日本は、この分野に関しては実に遅れているんです」
そうため息をもらすのは、北里大学名誉教授で、そよ風クリニック(東京都杉並区)院長の宮田幹夫先生。化学物質過敏症や電磁波過敏症を専門とする数少ない医師だ。スマホやパソコンの普及により頭痛や吐き気を訴える人が増え、注目されつつある「電磁波過敏症」。しかし、日本では「トンデモ病」扱いされているのが現状だ。果たしてこれは本当に、新たな現代病なのか?30年以上にわたって研究を続ける宮田先生に、解説してもらった。
そもそも電磁波とは、電気が流れるときに発生する電場と磁場が絡み合って、波を描きながら進む電気の流れのこと。少し難しいが、電気があるところには必ず電磁波が発生していると考えればいい。
「よく『電波』との違いを尋ねられますが、電波も電磁波の一種です。ガンマ線やX線などの放射線、紫外線、赤外線、可視光線(人の目に見える波長の光)などの光も電磁波の一種なんですよ。放射線の恐ろしさは3・11以降、誰もが知るところとなりましたが、ほかの電磁波についてもすべて、何かしら人体に作用しているんです」
実験や研究で明らかになった、電磁波による健康被害は以下のとおり。
「まずは角膜の損傷。ブラウン管から発する電磁波を浴びたマウスは3〜4時間で角膜の表面細胞が脱落してしまいました。さらに、電磁波を浴びると脳に添加物や有害金属などが侵入するのを防ぐ『血液脳関門』という場所がもろくなり、脳に毒物が侵入しやすくなってしまいます。そのほか、遺伝子が損傷することによる発がんリスクや、脳の神経伝達物質の働きを阻害することによる精神症状、アレルギー症状の悪化や血糖値の上昇も、判明しています」
次世代への影響も深刻だ。
「子どもと大人の後頭部に携帯電話を置いて比較した実験では、骨が未発達な子どもほど電磁波が脳の奥深くまで届いていることが判明しました。また、電磁波を浴びると精子をつくる精巣が萎縮し、精子が減少してしまいます」
そこで、身近にあるもののなかで、とくに電磁波源として扱いに気をつけるものを、宮田先生に選んでもらったのが次の4つ。
【スマホ】ガラケーはデータ通信量がスマホほどではないので、スマホに比べると変調派が弱い。
【IHクッキングヒーター】電子レンジは鉄の箱に覆われているが、IHは電磁波が垂れ流し状態。最近のものは手前に反射板がついているが、アイランドキッチンなどは家族全員が電磁波を浴びまくっている。
【インターネットの無線LAN(Wi-Fiなど)】電磁波が空間中を飛び回っている中で生活している状態。
【ハイブリッドカー】スイッチのオンとオフを繰り返すたび電磁波が発生。走行すると多量の電磁波を浴びる。
「電磁波が強い、また使用頻度の高さから電磁波を浴びる機会が多いものを挙げました。電磁波過敏症の症状は、頭痛や疲労感、不眠、皮膚のかゆみやピリピリした刺激などさまざま。もし、こうした不快な症状があるなら、使わないときは電源を切る、スマホはズボンのポケットに入れないなどの工夫をしましょう」