乳がんのため、左乳房全摘とリンパ節切除の手術を受けたことを4月13日、自身のブログで公表した、元SKE48でタレントの矢方美紀(25)。その後のインタビューでは「がんに対応する保険に入っていた」ことで、高額な治療費を支払うときに大いに役立ったことを明かしている。
日本人の死亡原因の1位のがんだけを対象に保障する「がん保険」――。がんの治療法が進歩する中で、「がん保険」も多種多様になっている。〈診断給付金〉を手厚くしたタイプ、放射線治療や抗がん剤治療の治療を保障したり、自由診療もカバーできる実費保障したりするタイプなどがそろっている。
加入するなら、自分に合った保険商品を選んでおきたいところ。そこで、『がんとわたしノート』(ピーケイシー)の著書があり、8年前に乳がんと診断され、闘病生活を送ったファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん(49)に選ぶポイントを聞いた。
「〈診断給付金〉は100万円のタイプがいいでしょう。そのお金は手術や入院だけでなく、生活費やウイッグの購入に充てることも可能です。抗がん剤治療をすると、薬剤の種類にもよりますが、副作用によって脱毛する場合があります。また手術の後遺症に『リンパ浮腫』があります。腕がむくんだときにつける医療用のサポーター代、マッサージの施術費用にも充てられます」
がん治療は長期間にわたるため、治療費以外の出費も多くなるという。自らの経験もふまえて、黒田さんが続ける。
「人によっては抗がん剤治療直後に体調が悪くなり、通院の場合はタクシーで帰らざるをえないこともあります。交通費がかさむだけでなく、夕方の家事をすることができずに、外食やお総菜の購入などが増え、食費が増えるということもあります。とくに女性の場合は、サプリメントや自然食品を購入したり、スポーツジムやヨガ教室に通ったりするなど、生活の質(QOL)の維持にお金をかける人も多い。そんなときに〈診断給付金〉は心強いのです」
さらに〈診断給付金〉には、「悪性(新生物)のみ対象」と「上皮内新生物も対象」などのタイプがある。「生活設計塾クルー」取締役でファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん(51)が解説してくれた。
「『上皮内新生物』は、がんが深いところまで広がらず、取ってしまえば転移の可能性がほとんどない状態で、大腸などなら、簡単な手術で治ります。このため『上皮内を対象外』として、保険料を安く設定した商品もあります。ところが、乳がんの『上皮内』の場合では、悪性とほぼ同様の治療コースになり、乳房全摘や手術後の放射線治療が必要なケースもあるのです。親族に乳がんの罹患者がいる人、さらには貯蓄がまだ十分でなく、治療で収入ダウンの恐れがある人は、『上皮内も悪性同様の保障』のタイプを検討するといいでしょう」
そして、深田さんは「がん保険」の選択ポイントをこう語る。
「充実した保障を求めると、その分、保険料もアップします。あくまで家計を圧迫しないことが重要です。45歳くらいの女性の場合であれば、保険料は3,000~4,000円台に抑えたいですね。年金で暮らすようになっても、月々の保険料を払い続けられるかどうかを判断の基準としましょう。がん治療だけでなくほかの病気も心配な人は、がんの診断給付金つきの『医療保険』に加入するという選択肢もあります。シングルマザーなど一家の“大黒柱”の人は、がんになったときに、年金がもらえる収入保障のある商品を考えてみてもいいでしょう」