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天気の変化によってきたす体調不良に悩まされたことはありませんか? それ、もしかすると「天気痛」かも。ここでは、「日本人の10人に1人がかかっている」ともいわれる新たな国民病の現状と対策について紹介します。

 

「天気が悪くなると、頭が重い、関節が痛い、古傷が痛むなどの症状が出るのが天気痛。原因は気圧の変化。これからの梅雨どきは要注意です」

 

こう話すのは、愛知医科大学で日本で唯一の「天気痛外来」を開設する佐藤純先生。天気痛の症状は「頭痛」「首痛」「めまい」「耳の変調」「事故の古傷、神経痛」「心の不調」などさまざまだ。

 

「ほかにも気管支ぜんそくやリウマチといった持病が悪化するケースもあります」(佐藤先生・以下同))

 

そもそも佐藤先生が天気痛を研究し始めたのは25年ほど前。名古屋市立病院で「痛み外来」の担当医だったころにさかのぼる。

 

「問診していると『天気が悪くなると痛む』と訴える患者さんが本当に多かった」

 

古来、「雨が降ると古傷が痛む」といわれ、いわば民間伝承のたぐいと思われがち。佐藤先生はこれを最新医学で検証。なぜ気圧が変化すると体調に影響するのかを、気圧室を使って実証実験。結果は思いがけないものだった。

 

「人はにおいや音には敏感に反応します。しかし低気圧が近づく程度の気圧の変化がわかるかどうかは疑問でした。しかしこの実験で、人には気圧の変化を察知する能力があることが証明されました」

 

その仕組みはこうだ。

 

「気圧の変化に関わっているのは耳の奥にある内耳。内耳には体のバランス感覚を保つために外リンパ液と内リンパ液があり、この2つを隔てる膜が気圧センサーになっていると考えられます」

 

天気痛とは、天気による気圧の変化に内耳の気圧センサーが過剰反応。内耳と近接する脳の自律神経(交感神経と副交感神経)にその乱れが伝わり、古傷や持病の痛みを呼び覚ましたり、めまいや気分の落ち込みといった不調を起こすことによるものだ。

 

佐藤先生は10年以上前から、愛知医科大学で「天気痛外来」を開設。当時は1日3〜4人の患者を診察した。

 

「天気痛を訴える人は、性別では女性が圧倒的に多い。また個人の体質や持病にもよりますが、内耳から脳に伝わった気圧の変化で交感神経が活発になる人は古傷が痛んだり、頭痛がする。反対に副交感神経に作用する人は強い眠気や体のだるさを訴えることが多いことがわかってきました」

 

しかし「天気が悪くなると具合が悪くなる」という症状はなかなか世間には通用しない。「怠け、仮病」と受け取られるケースが多かった。それに一石を投じたのが、3年前に放送されたNHK『ためしてガッテン』。佐藤先生が出演し、天気痛の実態が紹介され、大きな話題となった。

 

「正直なところ、視聴者に天気痛の存在を本当に信じてもらえるか不安でした」

 

ところが放送直後から、自分も同じ症状で苦しんでいるという声が殺到。いまでは「天気痛外来」の初診は1年待ちになっている。患者の症例が増えることで、よりくわしい天気痛の実態もわかってきた。

 

「当初は天気が悪くなる(気圧が下がる)ときだけと思われてきましたが、じつは天気が回復する(気圧が上がる)ときにも不調になっている人が多い。つまり天気痛の人にとっていちばんつらいのは低気圧と高気圧が交互に来て、激しく気圧が上下する時期です。とくに梅雨前線に沿って、低気圧がつぎつぎにやって来るこれからの梅雨どきがいちばんつらい時期になります」

 

次の「天気痛チェックリスト」をやってみよう。4つ以上当てはまったら要注意だ!

 

□なんとなく、雨が降りそうだとわかることがある
□天気の良しあしで、気分が浮き沈みしがちだ
□季節の変わり目は体調を崩しやすい
□乗り物酔いしやすい
□耳鳴りを自覚することがある
□雨が降る前に、眠気やめまいを感じたり、頭痛がすることがある
□新幹線や飛行機で耳が痛くなることがある
□過去に首を痛めたことがある
□片頭痛に悩んでいる
□ストレスを感じることが多い

 

もし自分が天気痛かもしれないと思ったら、佐藤先生が教える対象は次のとおり。

 

【1】めまいの薬
気圧を感じる内耳の働きを緩和させて症状を抑える。かかりつけ医に「天気痛」と告げて処方してもらう。気圧は雨が降る以前に変化し始めるので、天気が悪くなる前から、早めに服用することが大切。

 

【2】酔い止めの薬
『ためしてガッテン』で紹介された対処法がこれ。酔い止めの薬のなかにも内耳に作用するものがあるので効果が望める。これも雨予報の前から飲むこと。

 

【3】漢方薬
内耳のむくみをとることで知られる「五苓散」を漢方薬局で処方してもらう。

 

こうした薬以外にも、症状を和らげる方法はある。

 

【4】ツボを刺激
具合が悪くなったら、酔い止めのツボとして知られる「内関」と耳の後ろのツボを刺激する。

 

〈内関〉腕の内側に縦にある2本の腱の間。手首からひじに向かって指3本分下の位置にあるツボ。もともと酔い止めのツボで、めまいやふらつきに効く。左右どちらの手首でもOK。雨予報の2〜3日前から毎日指で押して刺激するとよい。

 

〈耳の後ろにあるツボ〉いずれも耳の後ろに出っ張った骨の周囲にある。1日3回ほど指の先で刺激するとよい。

 

【5】天気痛耳栓
佐藤先生が開発した、音は普通に聞こえ、気圧の変化だけを緩和させるフィルター付き耳栓(通販で購入可・税込み1,998円)。

 

原因を知らずに日本人1,000万人が梅雨どきに不調になる天気痛。あなたもこの5つの対策で、爽やかな梅雨どきを過ごせるかもしれない。

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