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超高齢社会、何より怖いと思われている認知症。原因とされるアミロイドβは健常な人の脳にも蓄積されているという。だが、新しい生活習慣で発症を防ぐことは可能なのだ——。

 

《60歳以上の5人に1人の脳に異常タンパク質アミロイドβが溜まっている……》

 

今年5月、大手新聞各紙にこんな見出しが躍った。“脳のゴミ”ともいわれるアミロイドβとは、アルツハイマー病の原因とされている脳内に発生する異常タンパク質。高齢者の7人に1人が認知症になるといわれているいま、「認知症だけは避けたい」と多くの人が願うだけに、衝撃的なニュースだ。

 

これは、東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野の岩坪威教授が中心となって、’08年から行っているJ-ADNIの研究によるもの。アルツハイマー病を発症していない60歳以上の健常者83人の脳の画像診断などから、23%にあたる19人にアミロイドβが蓄積されていたことがわかった。

 

「アルツハイマー病の発症は、加齢とともにアミロイドβが脳に蓄積し、リン酸化タウと呼ばれるタンパク質を発生させることが始まりです。このリン酸化タウが神経細胞の破壊、脳細胞の死滅を導きます。脳はある程度、細胞の数が減っても、予備能力で機能してくれるのですが、重要な領域の細胞の半分以上が破壊されるとアルツハイマー病では記憶障害などを発症し始めます」(岩坪教授)

 

平均寿命の延びに伴い、生涯で認知症になるリスクは40%というデータもある。

 

「ただ、アミロイドβが蓄積し始めても、アルツハイマー病が発症するまでに数年から相当程度の時間はあります。その間にアルツハイマー病の発症をくいとめることは可能です」

 

こう語るのは、脳神経外科医でおくむらメモリークリニック「もの忘れ外来」の奥村歩院長だ。

 

「アメリカには、アミロイドβが蓄積されてもアルツハイマー病が発症していなかったという研究発表があります。発症しなかった人たちがやっていたのは“認知予備力”を高めるということでした。認知予備力は、脳神経がある程度破壊されても、脳の中にある神経細胞同士を新しくつなげてくれる働きをして、認知の低下を補ってくれます。認知予備力は、日ごろの生活で鍛えることができます」(奥村先生)

 

そこで、奥村先生がおすすめする生活習慣を紹介。

 

【1】脳トレより将棋や麻雀など複数人でやるゲームをする

 

ある研究では、クロスワードパズルをする人は、認知症の発症率を40%程度下げるという結果が出ている。さらに発症率が下がるのがチェスで、74%だった。将棋や囲碁、麻雀も相当する。

 

「近年、脳トレが話題になっていますが、1人でやるのはあまり意味がありません。人と向き合いながら相手の気持ちをくみ取ることで、脳への刺激が増えることがわかっています」(奥村先生・以下同)

 

【2】映画は映画館で見る

 

映画は自宅でDVDなどで見がちだが、映画館へ行って見ることが、認知症発症率を下げるという。

 

「これには外出する効果も含まれています。外出のために着替えたり、電車やバスに乗ったり、歩いたりして映画館まで足を運びます。こうした行動が脳内ネットワークを活性化するのです。さらに、広くて暗いという非日常的な空間に入っていくことは、眠っていた感覚を刺激する効果があります」

 

【3】納豆を1日1パック食べる

 

’07年に国立循環器病研究センターから「大豆イソフラボンが女性の脳卒中予防のリスクを下げる」というデータが発表された。ただ、この研究の成果が出たのは女性だけだったという。

 

「おそらく、女性にはエストロゲンという女性ホルモンが分泌されているため、イソフラボンから刺激を受けたのだと考えられます」

 

ただ、取りすぎは逆効果となる。

 

「目安としては、納豆を1日1パックくらいでしょう」

 

この生活術、始めるには早ければ早いほどよいそうだ。脳の健康寿命のために、早速始めよう!

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