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「認知症とは、脳神経細胞の劣化によって起こる症状です。あとは脳血管障害、糖尿病を放置していたなど、複合的な要因も関係してきます。65歳以上、5つ年を取るごとに認知症になる危険性は2倍に。90歳を超えたら、6~7割の人は認知症になるといわれています」

 

そう語るのは認知症予防・治療の第一人者である朝田隆先生。加齢と認知症発症リスクは比例していて、年を取るほど発症率が高くなってしまう仕方ないことのよう。

 

’12年時点で、日本の65歳以上の認知症推定人口は約462万人、軽度認知障害(MCI)は約400万人といわれている。そもそも、認知症とMCIの違いは何なのか? 次々に湧いてくる疑問を解消すべく、朝田隆先生に疑問をぶつけてみた。

 

【Q1】認知症とMCIの違いとは?

 

「キーワードは『自立』です。生活の自立に支障をきたしてくれば認知症、自立生活がなんとか維持できていればMCI。たとえば物の置き忘れでいうと、眼鏡や財布などを一日中捜していたら認知症。その回数が少なければMCIです」(朝田先生・以下同)

 

【Q2】認知症・MCIが疑われる場合、病院はどこへ行けばいいのか?

 

「神経内科、精神科、老年病科などです。ただ、認知症・MCIの専門医は全国に約2,000人しかいません。インターネットで『日本老年精神医学会』『日本認知症学会』と検索するなどして、専門医を探してみてください」

 

【Q3】実際に病院に行くと、患者や家族にはどんなことが待っているの?

 

「長谷川式スケール(HDS-R)などの標準的なテストと面接です。面接では自分の人生史なども話してもらいます。あとは脳のMRIを撮り、それらを総合して診断します。私の場合、初診には40分前後をかけています」

 

【Q4】認知症・MCIと診断されたら、家族はどうすればいいの?

 

「一緒に行事に出かける、散歩する、大型スーパーへ行って店内をくまなく見てまわるなどして、脳を活性化させてあげる。あとは好奇心を引き出し、新しい経験をさせることも重要。いちばん大切なのは意欲をもって生活してもらうことです」

 

【Q5】認知症・MCIを疑われる家族に対する“禁句”は?

 

「『それ、さっきも言ったよ』といった、患者を責めるような言葉は3回に1回ぐらいにして、気長に接してあげてほしいです。何度も言われると、腹を立てる方も。『人のあら探しばかりして』という不満は、よく耳にします」

 

認知症やMCIを、患者本人やその家族が見分ける方法はあるのかと聞いてみると、「まず、自分たちで見分けようと思わないほうがいいです。すぐに病院へ行くことをおすすめします」とのことだった。

 

そこで本誌は、公益社団法人「認知症の人と家族の会」作成「家族がつくった 認知症 早期発見のめやす」をもとに、「認知症・MCI“早期発見”チェックリスト」を作ることにした。これは、日常の暮らしの中で認知症の始まりではないかと思われる行動を、「家族の会」の人たちの経験からまとめたもの。医学的な診断基準ではないが、いくつか思い当たることがあれば、専門医に相談を。

 

【もの忘れがひどい】
□今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
□同じことを何度も言う・問う・する
□しまい忘れ・置き忘れが増え、いつも捜しものをしている
□財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う

 

【判断・理解力が衰える】
□料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった
□新しいことが覚えられない
□話のつじつまが合わない
□テレビ番組の内容が理解できなくなった

 

【時間・場所がわからない】
□約束の日時や場所を間違えるようになった
□慣れた道でも迷うことがある

 

【人柄が変わる】
□ささいなことで怒りっぽくなった
□周りへの気づかいがなくなり、頑固になった
□自分の失敗を人のせいにする
□「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた

 

【不安感が強い】
□ひとりになると怖がったり寂しがったりする
□外出時、持ち物を何度も確かめる
□「頭が変になった」と本人が訴える

 

【意欲がなくなる】
□下着を替えず、身だしなみにかまわなくなった
□趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
□ふさぎこんで何をするのもおっくうがり、嫌がる

 

「認知症は進行速度が遅くなることはあっても健常に戻ることはありません。しかし、MCIは改善が期待できます。MCIと診断された方の26%は健常に戻るともいわれていますので、早期に対策を始めることをおすすめします」

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