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「近視や遠視などで、ものが見えづらくなるのと同様に、なんらかの原因で聞こえづらくなるのが『難聴』。特別な病気などではなく、誰でもなる可能性があるのです」

 

そう語るのは、これまで3万人以上の治療をおこなってきた日本リバースの今野清志院長。そもそも難聴とは、「音がほとんど聞こえない」のではなく、「聞こえづらい」状態を指す。

 

いっぽうで、自分の視力(見え方)はある程度具体的に答えられる人が多いのに対し、自分の耳がどれくらい聞こえているかを把握している人がほとんどいない、とも今野院長は指摘する。

 

「一般的に、健康診断での聴力検査は大きな問題がないかをざっくり確認するだけのものです。加えて、人が相手の話を聞くときは、相手の表情や口の動き、前後の文脈や雰囲気から推測もしています。そのため少しぐらい聞こえが悪くても自覚できず、気づかぬうちにどんどん耳が悪くなる人が増えているのです」(今野院長・以下同)

 

難聴の種類は大きく2つに分かれるという。

 

「耳は、音(空気の振動)を集めて鼓膜に伝える『外耳』、音を増幅する『中耳』、そして振動を電気信号に変換して脳に伝える『内耳』の3つの部位から成り立ちます。そのなかで、外耳から中耳までに問題があるものを『伝音性難聴』といい、内耳から聴神経に機能障害が起きて発症するものを『感音性難聴』といいます。この両方にトラブルを抱えている場合は『混合性難聴』と呼ばれます」

 

「伝音性難聴」は、耳垢がたまりすぎて外耳を防ぐ「耳垢栓塞」や、反対に耳掃除のしすぎによる「外耳炎」、子どもに多い「中耳炎」などが原因であることも多く、比較的、治療の効果も表れやすいという。問題はもう1つの「感音性難聴」だ。

 

「こちらはレントゲンやMRIを撮っても原因が特定できないことがほとんどです。そして、よく『耳が遠くなったのは年のせい』といいますが、一般に『老人性難聴』と呼ばれるこの難聴も、感音性難聴の一種なのです」

 

そのため、ある程度の年齢になれば、耳が聞こえづらくなっても「老化現象」のひと言で片付けられてしまうことが多いのが現状だ。しかし、放置すると「聞こえづらい」だけでは済まされなくなってくるという。

 

「耳の聞こえが悪くなると、人の話を正確に理解できません。当然、コミュニケーションに支障をきたし、思わぬトラブルになることも。実際に『同居しているお姑さんが、話しかけても返事をしてくれず、こっちを見ても知らん顔をするんです』と思い込んで私のところに相談に来られた女性がいました。そこで、お姑さんに検査を受けてもらったところ、やはり中程度の難聴であることがわかったのです。もしそのまま難聴であることがわからなければ、『わざと無視された』とお嫁さんは思い、嫁姑戦争に発展していたでしょう。夫婦間でも、同じようなトラブルが起こる危険性は考えられます。家庭内はもちろん、仕事上でも伝達がうまくいかなければ『話が通じない』『何度も同じことを聞いてくる』と思われかねません。その積み重ねが、大きなミスにつながる可能性もあるのです」

 

さらに、コミュニケーションがうまくとれなくなることで、うつや認知症のリスクが高まるとも!

 

「話がかみ合わないと口数が少なくなり、自分の世界にこもるようになります。すると無気力になってしまい、うつ症状を示すようになることも、決して少なくないのです。すると外に出かける機会も減ってしまうので、脳への刺激も激減。認知症の発症リスクも高くなってしまいます」

 

閉じこもりがちになれば足の筋力も弱くなるので、ますます家から出られなくなり、悪循環に陥りかねない……。

 

そんなとき、視力を補うメガネのように、衰えた聴力を補うために補聴器を使うことも選択肢の1つ。しかし、中医学の観点に基づいて感音性難聴の治療にあたる今野院長は、「できるだけ、自分の耳をよくすることを心がけてほしい」と呼びかける。

 

「補聴器は人間の耳とは違い、聞き取りたい音だけではなく周囲のノイズも拾ってしまうので、合わないという人も少なくなく、購入しても実際に使用しているのは4人に1人ともいわれています。もちろん補聴器の存在自体が悪いわけではありませんが、私の治療院では80代、90代の方々からも『耳そのものの聞こえがよくなった』という声をいただいていますよ」

 

人生100年時代。健康寿命を延ばす鍵は、じつは「耳」にもあるということか。

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