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「成人の口の中には約500種類の細菌が存在し、よく歯をみがけている人で1,000億〜2,000億個、多い人では1兆個といわれています。この細菌が虫歯や歯周病だけでなく、感染症の原因にもなるので、自分の口腔内の状態を科学的に知る手段として、唾液を調べることは非常に有効なんです」

 

こう話すのは、歯科医師の前島美佳先生。前島先生のクリニックでは、4年前から「唾液検査」を本格導入。すべての患者を対象に実施している。

 

「実際に検査を受けたことで、唾液の量が極端に少ないとか、虫歯ができやすい唾液の状態になっていることが判明し、その後の治療に役立っている人が多くいます」(前島先生・以下同)

 

前島先生のクリニックで実施している基本の検査を紹介。

 

【唾液量検査】

 

「最初に分泌量を見ます。唾液は20代がピークで、1日に約1.5リットルもの量が分泌されますが、70代ではその3分の1くらいに。唾液が減少すると、口腔内が乾燥して細菌が繁殖し、虫歯や歯周病になりやすくなるのです」

 

用意されたシュガーレスガムを3分間かみ、その間に出る唾液の量を測定する。

 

「基準は5ミリリットル。多ければ多いほど口の中は無意識に洗い流され、虫歯リスクが低くなっています。基準値未満だと、口腔内の環境が悪化している可能性がありますね」

 

【唾液緩衝能検査】

 

「次に、その唾液を使って、酸性度を調べます。酸性度を示すpH値は、6.8〜7が中性、それ以上がアルカリ性です。食事をすることで口内は酸性になりますが、そのまま酸性の状態でいると虫歯になりやすい。そこで、唾液に試薬を混ぜてpH値を色で判定し、赤くなれば安全。黄色くなるほど虫歯のリスクが高いことがわかります」

 

【潜血検査】

 

「続いて、試薬を用いてヘモグロビンを検出し、唾液に血液が混じっていないかをチェックします。口腔内に出血がある人は、その体内に細菌を取り込む口が開いているということ。歯みがき時に出血している人はもちろん、目に見えない微量な出血も見つけられます」

 

潜血検査で陽性の場合には、歯周病治療および予防処置が必要となる。

 

唾液検査は、予防歯科に力を入れているクリニックで導入されている。その数は全国で増えつつあるので、ネット検索などで、地元の実施クリニックを見つけることが可能だ。

 

費用は健康保険対象外で、今回紹介した検査の場合は、数千円程度(検査項目やクリニックによって異なる。精密検査の場合は1万〜3万円程度)。

 

新型コロナウイルスによる外出制限が解除されたあかつきには、一度、唾液検査で自分の口の中の状態をチェックしてみてはいかが?

 

「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載

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