夏本番を前に、きちんと対策をしておきたいのが熱中症。コロナ禍で例年より家にいることが多いこの夏は、炎天下だけでなく、室内での発症にもいっそうの注意が必要。
「この夏は例年より気温が高くなることが予想されています。そして、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの人が例年より長時間自宅にいることが考えられます。梅雨が明けるまでは雨の日も多く、窓を開けて換気する時間も短くなり、蒸し暑さを感じやすいでしょう。自粛生活でストレスもたまりがちで、体調を崩す人が例年より増えることが懸念されます」
こう話すのは、東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌先生だ。
消防庁の発表によると、熱中症により救急搬送される人の数は、意外に屋内でも多い。熱中症が発生する場所別の割合(今年6月8〜14日)では、住居42.7%、公衆(屋内)6.9%と、屋内合計は49.6%とほぼ半数が屋内で発生しているのだ。また、昨年の統計を見ると、いまの時季から患者数は急増し始め、7月末〜8月初めにピークを迎えている。
熱中症は、体内で発生した熱をうまく外へ放出できずに、体内の水分が失われることが原因で発生する。
「体内で水分が不足している状態を放置しておくことにより、体液のバランスが崩れて、脳細胞のはたらきが低下し、さまざまな症状が発生するのです。初期症状には、めまいや立ちくらみ、手足のしびれなどがありますが、悪化すると頭痛、吐き気、集中力・判断力の低下などが現れます。重症になると、意識障害や手足の硬直が起こり、命に関わりかねません」(桑島先生・以下同)
その熱中症が屋内で発生するのには、気密性の高さが関係している。桑島先生が特に注意したいと指摘するのが次の3カ所。
「窓がなく、換気のしにくいスペースや屋根に近い部屋、キッチンや浴室の脱衣所など、熱がこもりやすい場所には気をつけましょう。換気扇や扇風機、エアコンなどで空気を循環させたり、室温を下げるなどしてから使うように心がけましょう」
体の不調が出てからでは手遅れだ。そこで桑島先生が、熱中症を未然に防ぐためのポイントを教えてくれた。
■室内の温度は27度に保つ!(換気も忘れずに)
「私たちの体は28度以上で暑さを感じます。日中のエアコンの設定温度は27度を目安にしましょう。ただし夜は28度が最適です。さらに扇風機を使って室内の空気を循環させるのも有効です」
■室内への直射日光を遮断する!
「南向き、西向きの部屋など直射日光の入る部屋は温度が上がりやすくなります。本人が気づかないうちにじわじわと汗が蒸発して、“隠れ脱水”になりかねません。カーテンを閉めたり、窓際で過ごすのを避けるようにしましょう」
■1時間にコップ1杯の水を飲む!
「のどが渇いたと感じる前に水分を補給することが肝心です。日中は、目安として1時間にコップ1杯程度の水を飲むようにしましょう」
■軽い運動で適度に汗をかく!(踏み台昇降など)
「巣ごもり生活の影響もあり、運動不足気味の人も注意が必要です。長い間座っていることが多いので、血栓が発生するエコノミークラス症候群を招く恐れがあります。さらに、運動不足は発汗機能を低下させてしまいます。軽く汗をかく程度の運動を心がけましょう。階段を利用して、踏み台昇降のように上り下りを繰り返すなど、足腰の筋肉を鍛えるようにしましょう。脚の屈伸運動も大切です」
■1日3食をきちんと取る!
最後は、規則正しい食生活。暑くなると食欲が落ちてしまいがちだが、食欲がないと、消化酵素の働きが低下し、栄養の吸収が悪くなる。これも熱中症の原因となりうるのだという。しっかりと3食取るようにしよう。
暑さは厳しさを増す一方だが、正しい対策と心がまえで、室内で起こる熱中症を予防しよう。
「女性自身」2020年7月7日号 掲載