日本人の4人に1人が罹患しているといわれる「変形性ひざ関節症」。ひざの痛みのおもな原因となるこの厄介な病気ですが、じつは家に“居ながら”でも改善する方法があるんですーー。
外出機会の減少による運動不足や、ストレスによる過食……。長引く外出自粛がもたらした「コロナ太り」の影響は多岐にわたるが、とりわけ中高年女性を直撃している影響が“ひざの痛み”だ。
「『歩くとひざの内側が痛い』『朝起きて一歩を踏み出すときに痛みが走る』と訴える患者さんが増えていますが、これは体重の増加で、ひざ関節にかかる負担が増したことが原因です」
そう語るのは、戸田整形外科リウマチ科クリニックの戸田佳孝院長。手術をせずに、ひざ痛や股関節の痛みを治す保存的療法を研究し続けている戸田院長だが、「コロナ太り」による外出自粛で悪化したひざの痛みは、これからの季節こそ注意が必要だと指摘する。
「雨の日が多くなり、室内で過ごす時間がさらに増えると、一度落ち着いたひざの痛みがぶり返すことも考えられますので、早めの対策が必要です」
日本人の4人に1人が、ひざ痛の原因となる「変形性ひざ関節症」と推定され、その約8割が女性だといわれているが、その改善のためには、まず痛みの状態を知ることが必要だという。
ひざの痛みの多くは、加齢や肥満によってひざの軟骨がすり減ることで半月板が損傷してしまい、割れた半月板が横にはみ出て神経を圧迫して起こる。階段の上り下りの際や、朝起きたときにひざに痛みを感じるのはこれが原因。
さらに、割れた半月板が飛び出さないよう、ひざの内側に骨の堤防「骨棘」ができると、「変形性ひざ関節症」という診断が下される。
そして、この「ひざ変形関節症」の原因について戸田院長が挙げるのが「O脚」と「肥満」だ。
「日本人にはO脚変形の人が多いのですが、O脚は歩くときは片ひざに全体重が乗ってしまい、大きな負担がかかります。姿勢のよい人は、歩行時に大腿骨に対して脛骨が外側に回転し、ひざが伸びた状態でロックがかかるため、横揺れしないで歩くことができます。これを『スクリューホーム運動』といい、ひざがよく伸びていると、地面からの反発力が股関節へと逃げていくわけです。ところが、O脚で姿勢が悪い人、下半身が衰えている人は、大腿四頭筋の力が弱まり、かかとから地面に着くときにひざがまっすぐ伸びなくなります。そのため、地面からの反発力がすべてひざにかかってしまい、ひざの横揺れが起こり、軟骨のすり減りにつながるわけです」
ひざ痛を悪化させないためには、ストレッチや筋トレでO脚の影響を抑える必要がある。どうしてもひざの痛みがひどくて運動できない、という人には戸田院長が推奨する、ひざ関節の可動域を広げて、コリをほぐしながら痛みを和らげる「ほぐしストレッチ」がおススメ。
【ほぐしストレッチ】ひざまわりの筋肉をほぐして「痛みの悪循環」を断ち切る!
■「かかとストレッチ」左右6回ずつ、週に3回
ベッドの上か床であおむけになり、片方のひざの内側をもう片方の足のかかとで圧迫し、そのまま斜め前方に向けて押す。※浴槽に足をのせるとひざが伸びやすいので、お風呂でのストレッチもおススメ!
■「足の関節ストレッチ」【1】【2】…各動きを左右10秒ずつ、【3】…左右10回ずつ。いずれも1日3回
【1】かかとを固定し、足先のほうから順に関節をほぐす。指のつけ根にある関節を、横に揺らす→まわす→ひっぱる。
【2】かかとを固定し、足先のほうから順に関節をほぐす。足の甲の盛り上がった部分の関節を、横に揺らす→まわす→ひっぱる。
【3】足首の関節の足首の前のくぼみからかかとに向かって押しながら、かかとの骨を下に引っ張る。
■「つま先60度ストレッチ」【1】〜【3】を左右30回ずつ、朝と夜に
【1】ベッドの上か床に座り、ひざを立てた足のかかとの下にタオルを敷く。つま先をまっすぐ前に向けて、ひざを曲げながら足を体に引き寄せる。
【2】タオルをゆっくり滑らせて、ひざを伸ばしながら少しずつつま先を体の外側に傾ける。
【3】つま先が60度外側に傾いたときにひざを伸ばしきる。
「かかと押しストレッチ」は、寝ているときや、朝、目が覚めたときにひざが痛む人向け。起床時にベッドンの上で、痛むほうのひざの内側を、反対側の足のかかとで圧迫して、斜め前方に押し出すようにしてみよう。
「ベッドから起き上がり、歩きだしたときの痛みが軽減できます。入浴中、湯船につかりながら行うとひざも伸ばしやすいですし、痛みの緩和にも効果的。最初は1日おきぐらいを目標にし、慣れてきたら毎日行いましょう」(戸田院長・以下同)
変形性ひざ関節症の人はひざの横揺れが起こりやすく、軟骨がすり減りやすくなっているが、「足の関節ストレッチ」は、関節の可動域を広げて、ひざの横揺れを予防する効果がある。また「つま先60度ストレッチ」では、スクリューホーム運動が習慣づき、スムーズな歩行を促してくれる。
「一生自分の足で歩けるようにするためにも、ひざ痛を解消し、正しい姿勢で歩けるようにしていきましょう」
巣ごもりを強いられる毎日を逆手に取って、家に居ながら、レッツ、ひざケア!
「女性自身」2020年7月21日号 掲載