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「効果があったもんなのか。なんとなくちょっと違うんじゃないか」

 

麻生太郎財務大臣は、9月21日の会見で、新型コロナウイルスの感染予防対策の行動制限についてこう注文をつけた。

 

新規感染者数が減少し、大きなうねりとなった第5波が収まりつつあるなかで、副総理の口から飛び出した「お前がいうか?」発言。これをそのまま受け入れて“緩める”のは、どうなのだろうかーー。

 

秋風に冷たさが増している。これから迎える冬を前に、気がかりなのがインフルエンザの流行だ。元厚生労働省健康局長で、医学博士の中島正治医師が語る。

 

「昨シーズンは人流が大幅に抑制され、マスク着用や手洗いの励行など感染予防の意識の高まりもあり、インフルエンザの流行はほとんどありませんでした。これは日本だけでなく、世界各地でも記録的に低いまん延率となりました。しかし、米国で発表された論文では、新型コロナワクチンの接種が進み、マスクや手洗い、ソーシャルディスタンスなどの対策が緩和されたことを受け、今シーズンはインフルエンザが流行する可能性が指摘されています」

 

8月31日、米ピッツバーグ大学公衆衛生大学院の研究チームは、今季のインフルエンザの患者数はコロナ禍前の平均より20%以上増え、入院患者が60万人にものぼる可能性があると発表している。

 

しかし昨季の激減ぶりや、いまなおコロナ禍が続いていることを考えると、今年の冬も国内でインフルエンザが猛威をふるう可能性は低いようにも思える。日本ワクチン学会の理事で、長崎大学の森内浩幸教授は次のように語る。

 

「昨シーズンは流行の規模が小さく、感染者数も少なかったことで、インフルエンザに対する集団免疫が落ちていることも考えられます。そのため、今シーズンは再び流行するという見方もあるのです。例年、夏から秋にかけて流行している、乳幼児にとっては新型コロナよりも危険なRSウイルスによる呼吸器の感染症は、インフルエンザ同様’20年はほとんど起こりませんでした。ところが今年は、RSウイルス感染症が夏前からコロナ禍前のシーズンの2~3倍の勢いで流行を起こしています。要因としては、RSウイルスに免疫を持つ人が減っていたことが挙げられます」

 

インフルエンザの流行が例年どおりだとすると、12月から患者数が増えはじめ、1~3月ごろにピークを迎える。

 

そこで心配なのは新型コロナの第6波と重なることだ。森内先生が語る。

 

「冬になると温度、湿度ともにコロナウイルスにとっては有利な状況になります。第6波の到来は確実にあるものと思っておいたほうがいいでしょう」

 

ちなみに、第3波は昨年12月から徐々に感染者が増加し、今年2月には全国で重症者が1,000人を突破するなど拡大をみせた。第6波も、クリスマスや年末年始など行動制限が緩むシーズンにピークを迎える恐れは十分にあるのだ。

 

「新型コロナの感染症と、インフルエンザの同時流行である『ツインデミック』(2つの流行)の可能性も考えておく必要があります。どちらも症状が共通しているため、抗原検査やPCR検査を行わない限り区別がつきにくい。さらにコロナウイルス感染による医療提供体制がひっ迫している状況では、インフルエンザの重症化による入院が困難になる可能性もあります。限られた医療体制の負担を軽減し、病床数を確保するためにも、インフルエンザの予防が求められます。特に予防接種は、入院や重症化を4割程度予防できる効果があります」(中島先生)

 

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