「『何軒も調剤薬局を回っているのに、ここにもないんですか? ジェネリック医薬品(後発薬)がないなら先発薬でもいいのに。取り寄せもできないのはなぜですか?』。お客さまから、そんなふうに詰め寄られることもあり、ほんとうに申し訳なくて……」
そう胸のうちを明かすのは、大手薬局チェーンに勤務する薬剤師のAさんだ。
じつは今、患者が処方箋を持って調剤薬局を訪れても、該当の薬が手に入りにくい、という異常事態が起きている。
日本製薬団体連合会が調査したところ、8月末時点で流通している医薬品1万5,444品目のうち、2割にあたる3,143品目が「欠品・出荷停止」か、欠品を避けるために、常連の取引先を中心に一定数ずつ卸す「出荷調整」の状態になっていることがわかった。うち9割がジェネリックだという。
「出荷調整になると、過去にその薬を仕入れた実績のある薬局しか仕入れができません。入荷がない場合は、そのつど医師と相談して、『こっちがないなら、あっちの薬』と、まるで綱渡り……」(Aさん)
厚労省に対策を求める声明を出した神奈川県保険医協会の副理事で、章平クリニック院長の湯浅章平さんは、原因をこう解説する。
「医療費を抑制したい厚労省は、これまで、価格の安いジェネリック薬品の普及を推進してきました。その結果’05年には32.5%のシェアだったジェネリックが、’20年には約2.4倍の78.3%に急拡大しています。増産を求められるジェネリックメーカーは『なんとか安定供給を維持しなければ』というプレッシャーのせいか、製造工程で不備や不正が横行していたんです」
昨年12月、ジェネリック医薬品メーカーの小林化工が製造した経口水虫薬を服用した患者ら数百人が体調不良を訴え、70代の女性が死亡した。この事件を受け、ほかの後発医薬品メーカーの査察が行われた結果、業界最大手の日医工ほか、多数のメーカーで製造工程の不備が発覚。これにより業務停止が相次いだため、ジェネリック医薬品が供給不足に陥ったのだ。