長引くコロナ禍で健康診断、人間ドックなどの受診を控えて、病気の進行を招いてしまったというケースが後を絶たない。
「2人に1人ががんにかかると言われているのに、忙しいからとがん検診を後回しにすることは、リスクを無視しているのと同じことです。早期発見して適切な治療を受けること。でも、私は一般的ながん検診や人間ドックは患者さんにおすすめしていません。精度の高い部位別のオプション検査を受けるほうが早期発見できます」
そう語るのは、糖尿病の専門医として年間3千人以上の患者を診ているAGE牧田クリニックの牧田善二院長。特に、糖尿病の患者はがんの罹患率が高まるため、早期発見できる精度の高いがん検診をすすめているという。
「血液検査、尿検査、血圧測定という基本項目は、健康診断で受けておきましょう。それにプラスして、脳はMRI(磁気共鳴画像)、首から下腹部まではCT(コンピュータ断層撮影)検査で体内を輪切りにして見る、胃と腸は内視鏡カメラで粘膜を直接見る、この3つで全身をチェックできます。CT検査による放射線の被ばく量は少ない量ですが、どうしても心配という方には、MRI検査に変えるプランもあります。私のクリニックでは毎年50人弱の患者さんにがんが見つかりますが、早期に治療につなげることができているので、大事に至らずに済んでいます」(牧田院長・以下同)
■認知症の早期発見に脳MRIとVSRAD
読者世代は家族の健康を優先して、自分のことは後回しにしがちだが、いつまでも元気で過ごすためにも健康なときに体の隅々をチェックしておきたい。そこで、牧田院長に50代以降が受けておきたいおすすめオプション検査を教えてもらった。
まず、脳MRI検査では、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍のほか、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤の兆候など、すべてがわかる。
「認知症を早く見つけるためには、脳MRI検査と同時にVSRAD(ブイエスラド)という画像診断装置で脳の海馬が萎縮しているかどうかを確認するとよいでしょう」
最近、大気汚染などの影響があり、肺がんで亡くなる女性が増えている。がん部位別死亡数(厚生労働省「2020年人口動態統計確定数」)で肺がんは2位だった。
「胸部エックス線検査では小さな肺がんは写りません。最初から胸部CTで検査しておけば、早期発見できます。肺がんの摘出手術は肋骨を取り除いて大がかりになりますが、早期であれば体にダメージが少ないロボット手術を受けることができ、元の生活に戻れる確率も上がります」