この春、ようやく3年にも及んだマスク生活から解放されたとはいえ、「今さらマスクを外して素顔をさらすなんてことはできない」と嘆く女性たちは多い。
「長いマスク生活で口元が下がり、顔のむくみに悩む声をよく聞きます。私たちの整骨院にも、顔や体の不調を訴える人が来ますが、問題を抱えている人は100%あごがズレています。アンチエイジングのために、肌に保湿剤やリフト作用のある化粧品をぬったとしても、あごのゆがみを解消しない限り問題は解決しません。しかも、あごのズレに気がつかないでそのままにしておくと、全身の不調を招く“あご疲れドミノ”を起こします」
そう注意を促すのは『90秒 あご筋ほぐし』(世界文化社)の著者で、さつま骨格矯正鍼灸整骨院の薩摩宗治総院長。
薩摩総院長は、柔道整復の技術と歯学を融合させたセルフケア「さつま式(R)メソッド」で、顔と体のゆがみを同時に予防することを提唱している。
鏡を見たらエラが張って顔がむくんでいる、歯のかみ合わせがおかしい。また、肩こりや腰痛の症状もある。これらはあごのゆがみを放置することで起こる“あご疲れドミノ”のシグナル。
「歯の食いしばりなどであごを支える咬筋、側頭筋、内側・外側翼突筋が硬くなると、下あごが下後方に引っ張られ、ズレる『あごがたるんだ老け顔』のような状態になります。体はあごのズレを、骨格や肩甲骨でバランスをとって調節しようとするので、背中が丸まってきて猫背になり、肩こり、腰痛、ひざなどの関節に痛みが生じてきます。ドミノ倒しのように不調が起こるのです」(薩摩総院長・以下同)
■あごのズレに重要な“第3の咬筋”
だが、それだけではないという。
「あごのすぐそばにある首まわりには、大きな血管やリンパ、神経が通っています。あごがズレるとこれらを圧迫し、血流が悪くなれば全身に栄養が行きわたらず、リンパの流れを阻害して、老廃物をため込み太りやすくなります。また、神経が圧迫されると、自律神経のバランスが乱れて不眠になったり疲れやすくなる。このようにあごのズレを放っておくと内臓にまで悪影響が出てくるのです」
特に、薩摩総院長が注目しているのが、’21年12月にスイス・バーゼル大学のジルヴィア・メゼイ博士率いるチームが発見した“第3の咬筋”。
「これまでの咬筋は多くの解剖学のテキストで、顔の表面近くを走る咬筋浅部と、それにやや角度をつける形で口内に近い位置を走る咬筋深部の2層の筋肉からなると説明されていました。しかし、メゼイ博士らの研究によって新たに第3の層が確認されました。これまで知られていた筋肉の層のさらに深部に“第3の咬筋”があり、あごの開閉を安定させる重要な役割の筋肉だったのです。ここの動きが悪くなると、かみ合わせが悪くなり、体全体のゆがみを招き、消化吸収はもちろん内臓にも悪い影響をおよぼすことがわかりました」
そこで、薩摩総院長が考案したのが“第3の咬筋”をほぐしてあごのゆがみを整える「90秒ベーシックあごケア」。